元高校4冠の「中京の怪物」、WBO世界ミニマム級2位の田中恒成(19=畑中)が、いよいよ世界に挑む。5月30日に愛知・小牧市のパークアリーナ小牧で同級1位フリアン・イエドラス(26=メキシコ)と同級世界王座決定戦を行うことが決まった。

 プロ4戦4勝の田中に対し、相手はプロ25戦で24勝1敗のファイター。「タフでパワフルな選手」と気を引き締める田中だが、自信は揺るがない。「5戦目でこの舞台を用意してくれた周りにも感謝を込めて勝ちたい。必ず世界チャンピオンになります」と、日本最速の世界王座奪取へ力を込めた。

 元WBC世界スーパーバンタム級王者の畑中清詞会長(47)が、一目ぼれした逸材だ。空手もやっていた小学校5年生の時、ジムに来た田中を見て、同会長は「稀に見る格闘技センスがある。それは言葉に言い表せないけど、近い将来チャンピオンになると思った」と言う。過去に名古屋のジムからは、同会長を含めて薬師寺保栄、飯田覚士、戸高秀樹の4人の世界王者が育っているが「そのどのチャンピオンよりも優れている」と同会長。スピード、スタミナ、テクニック、いろいろな部分のどこかを問われると同会長は「すべてです」と断言した。

 普段の田中は、格闘家らしさを見せない。3月23日の記者会見で着用したストライプ入りのグレースーツは、駒大ボクシング部でリオ五輪を目指している兄亮明さん(21)の「お下がりです」と笑う。髪形も茶や金髪、長髪でもなく、黒で平均的。これまでプロ4戦のファイトマネーも、ほとんどを貯金と練習経費に使う堅実派だ。

 格闘家らしいのは、心の部分。中京高時代の恩師から言われた「ストロングスタイル」という言葉を好み「アウトボクシングでも、インファイトでも強い気持ちを持って戦う」という信念を持つ。だからこそ、大一番までに「自分の力を全部出し切るメンタルを作りたい」と話す。厳しい練習で追い詰めた先に出来上がる精神力で、最初の夢をかなえる。【木村有三】