拳四朗。ちょっと変わったリングネームだがボクサーらしい。「けん・しろう」と読む。本当は名前で名字は寺地。プロ野球は「イチロー」の登場後に1単語の選手が増えた。日本のボクシングでは「リングネームは2単語以上の組み合わせ」と規定する。日本ヘビー級2代目王者となった藤本。K-1時代の京太郎を希望も、本名の藤本京太郎にせざるを得なかった。

 拳は実力もなかなかだ。3月26日に後楽園ホール初登場。右リードでペースをつかみ、ファイターをかわす。6回に右ストレートで左まゆをカットさせ、7回に傷口が広がってレフェリーストップと快勝した。

 昨年8月プロデビューの3戦目だが、すでにミニマム級で東洋太平洋9位、日本4位にランク入り。相手の長嶺は12年フライ級全日本新人王で、網膜剥離でブランクはあったが10戦全勝(6KO)。拳は無敗のホープ対決を制した。

 「聖地で勝ててうれしい」。取材陣に囲まれると「スターになった気分」と、ベビーフェイスは初々しかった。関大では13年には関西リーグ優勝に貢献し、国体で名門大から初の王者となった。この1年で日本王者を目標にしている。

 京都・宇治にあるBMBジムでトレーナーを務める。寺地永会長は父で、日本ミドル級と東洋太平洋ライトヘビー級の王者だった。引退後は会社を経営、城陽市の市会議員にもなり、05年にジムを開いた。

 拳は高校進学のために競技を始め、父の影響も少しあったという。スポーツでは世界でも2世は多いが、以前は父が好きだったり、果たせなかった夢を託すことが多かった。ボクサーも増加傾向にある。

 最近は現役中に結婚し、子どものいる選手も増えた。帝拳ジムの世界王者コンビは子どもを励みにするが、山中は「やらせたくない」、三浦は「本人がやりたいなら」。2世もボクサーへ、今は消極的だった。

 日本で親子とも王者は野口、内藤の日本王座2組しかいない。親子で世界王者となると、海外でもスピンクスら6組だけ。日本では元世界王者の子どもがボクサーになった例も少ない。過去は花形、輪島と2人で、いずれも今はジムのマネジャーを務める。

 親子で大成には険しい道のりが待つが、3人目がいる。辰吉ジュニアがどんな道を歩んでいくのか、なかなか興味深い。プロデビュー戦は、4月の山中の世界戦で「セミセミファイナル」に設定された。注目の一戦となる。【河合香】