元世界2階級王者の長谷川穂積(34=真正)が、12月11日に再起2戦目を行う。相手は、WBO世界スーパーフェザー級5位のカルロス・ルイス(22=メキシコ)。試合のリミット体重は57・6キロで、フェザー級(57・1キロ)に近いとはいえ、長谷川にとってはキャリア40戦目で最も重い選手と対することになる。

 「強い選手としたいということで、フェザー級の選手と交渉してもらっていたんですけど相手が決まらず、結果1つ上のスーパーフェザーの選手と試合することになった。今までスーパーフェザーとはやったことがない。僕は、フェザーでも大きくないのでね。実際に試合をしてみないと、相手の体の強さ、パワーは分からないところがある。不安は大きい」。

 長谷川は、素直に心の内を語った。

 世界戦ではないのだから、対戦相手のレベルを落として、フェザー級の選手とやる選択肢もあったはず。陣営に「世界ランカーとやりたい」と要望していた長谷川だが、スーパーフェザーの選手と対戦することには迷いがあったという。それでも、関係者が世界中から相手を探してようやく見つかった選手でもあり、意を決した。

 「どうせ同じ練習をするならね、同じスパーをするならね、相手が強い方がいいじゃないですか。ここから先、10年も20年もボクシングやるなら別やけど」。

 試合5日後の12月16日に35歳になる長谷川には、現役として残された時間は長くはない。楽な相手とやって貴重な時間をロスすることを思えば、強い相手とやって濃密な時間を過ごしたい。そんな思いがあった。

 勝てば、来年の世界再挑戦へ望みも出てくる。しかし、長谷川は、今、この一瞬にすべてを懸けている。「先を考える余裕はないですよ。この試合だけ考える。一生懸命やって戦うだけ。それでも、勝てる見込みはないので。不安はあります。不安がないと、試合する意味がないので」。不安があるから、練習する。不安があるから、気持ちも強くなれる。長谷川の不屈の魂は、まだ燃え尽きてはいない。【木村有三】