1年の納めの場所。とにもかくにも役者がそろった。ケガで秋場所を休場した横綱白鵬(30=宮城野)、横綱日馬富士(31)、大関照ノ富士(23=ともに伊勢ケ浜)の上位陣が全員、出場する。これに胸をなで下ろしたのは、九州場所担当の親方衆やファンだけではない。懸賞担当の相撲協会職員も同じだった。

 九州場所の懸賞総数は、1500本の後半に上る見通し。これは、地方場所の過去最多。今年名古屋場所の1509本を更新する勢いだ。これらを割り当てる協会職員の樋口啓之さんは、上位陣の出場を聞いて安堵(あんど)した。もし休場だった場合は各社と連絡を取り、多くの懸賞を掛け替えるなど調整しなければならない。「ひとまず良かったです」と漏らして「あとは休場者が出なければ…」と、力士の無事を願った。

 無事に始まりそうな今場所。その懸賞をのぞくと、結構“変動”が出た。個人を指定した懸賞で、1位の白鵬(181本)と人気力士の遠藤(180本)は常連。だが、3番手にはこれまでと違って琴奨菊(31=佐渡ケ嶽)が161本を数えた。やはり、ご当地力士への期待は大きい。

 さらに、秋場所で2横綱2大関2関脇を倒して躍動した小結嘉風(33=尾車)には、消臭剤の「丹羽久」など、新規で2社がついた。「先場所の活躍が大きいようです」と樋口さん。活躍が、新たな懸賞を呼ぶ。終わりの見えない“懸賞バブル”の中で、こうした現象は、少なからず力士に元気と勇気を与える。

 ほかにも、塩を扱う「ダイヤソルト」が佐田の富士(30=境川)についた。「伯方の塩」がつく安美錦(37=伊勢ケ浜)と対戦すれば、よもやの塩対決。取れなかった方は“塩対応”と呼ばれても、おかしくない。

 そして、こちらは意外か、ざんばら髪の新入幕御嶽海(22=出羽海)には1社、それも1日だけしかついていない。「新日鉄住金エンジニアリング」から4日目に懸けられただけ。ただ、これも「今場所の活躍次第で、一気に増えるでしょう」(樋口さん)。

 ちなみにお茶漬けで有名な永谷園は、遠藤の取組の懸賞旗を変更。8日の初日から放送されるCMになぞらえて「遠藤関だっこちゃん」バージョンとなる。呼び上げられるコメントも、ちょっと変わる。これも見逃せないし、聞き逃せない。

 力士の手元に届く、その1本1本の懸賞。相撲には欠かせない、彩りとなる。【今村健人】