九州ならではの“敵”が、力士たちに忍び寄っている。その名もPM2・5(微小粒子状物質)。隣国・中国の大気汚染が原因で、日本でも影響が出ている。特に偏西風が吹く春や秋、北風が吹き込む冬場は深刻で、福岡では専用の予報も流れるほど。呼吸器系の症状を訴える人が多く、旭秀鵬は端正なマスクを崩して「ずっと変なんだよ。こんなの初めて」。照ノ富士も喉の痛みを訴え「何でだろうなあ」と首をかしげる。目に見えない脅威が関係している可能性は高い。

 呼び出しにとっては死活問題だ。取組前にしこ名を読み上げるため、商売道具の喉は命。予防に努め、照ノ富士と同部屋の照矢は「加湿器は衣替えの一部。マスクもして寝ています」と、体調管理を徹底している。今場所から立呼び出しに昇進した拓郎は声帯炎で休場した経験があり、気の使い方も人一倍。「風邪をひかないのが基本だからね」と話す手には、のどあめを溶かしたさゆがあった。

 雨が降るとPM2・5の飛散は抑えられるが、あいにくの天気が続いた福岡にも久々に青空が戻った。場所もいよいよ大詰め。熱戦で、病を吹き飛ばしてもらいたい。【桑原亮】