夏場所では、新十両だった宇良(23=木瀬)を15日間取材した。10勝5敗の成績も立派だが、土俵際の逆転劇や、得意の反り技を試してみたりと、館内を連日大いに沸かせた相撲は、期待以上のものがあった。

 毎日、取組後に話を聞いて感じたのは、素直さと謙虚さだ。3日目、同じ新十両の佐藤に敗れた後は「また力の差を見せつけられた。強いです」と、言い訳もせずに負けを認めていた。幕下白鷹山と対戦した8日目後は、幕下との取組について「やりづらさはないですよ。自分の方が弱いと思ってやってるんで」。千秋楽が終わった後は、15日間を振り返り「ほぼ、まぐれで勝った。まだまだだなと。自分が弱いと感じました」と真顔で言った。収穫について問われても「まだ稽古せなあかんと思えたこと。来場所も(目標は)8勝でいいです」と答えた。謙虚で控えめな言葉が続いたが、どれも本心だろう。多種多様な技に注目が集まっているが、宇良がこだわっているのは「押し」。小柄な体から、大きな相手を突き上げるように押す相撲を目指し、名古屋場所まで稽古とトレーニングに励むことだろう。

 時折出た、面白い発言にも興味が沸いた。序盤5日目終了後は、毎日楽しいかという問いに「楽しくないですよ」とピシャリ。「この生活が、あと2セットある。程遠い気がします」と、初体験の15日間の長丁場に本音をこぼした。7日目の北太樹戦後は「今日はかちあげを食らうか、食らわないかの勝負だった。食らったら死んでましたよ」。2桁勝利に達した14日目には、突然「早く幕内に上がって技能賞が欲しい」と口にした。あまり大きなことを語らないだけに驚いた。本人は「言い過ぎた」という思いがあったのか、すぐに「夢の話です。将来ですよ」とはぐらかすように話したが、胸の内に秘める熱い思いを垣間見た気がした。

 次の名古屋場所では、十両の中位まで番付を上げることが確実だ。そこで2桁以上勝てば幕内昇進のチャンスも出てくる。暑い名古屋を、宇良がさらに熱くさせてくれそうだ。【木村有三】