ボクシングの元世界ヘビー級チャンピオンで、米国で黒人差別撤廃の公民権運動の象徴でもあったムハマド・アリ氏が3日、死去した。74歳だった。米ケンタッキー州ルイビル出身。葬儀は8日にルイビルで執り行われる。

 呼吸器系の病気でアリゾナ州フェニックスの病院に入院したと伝えられた直後だった。

 アリ氏は1960年ローマ五輪のライトヘビー級で金メダルを獲得した。プロ転向後は64年にソニー・リストン(米国)から世界ヘビー級王座を奪い、自ら「チョウのように舞い、ハチのように刺す」と表現した華麗な闘い方で9度防衛に成功した。イスラム教に改宗し「カシアス・クレイ」からアリに改名。ベトナム戦争では徴兵を拒否したためタイトルを剥奪され、黒人解放運動に参加した。

 日本では76年に東京でプロレスラー、アントニオ猪木との異種格闘技戦で大きな関心を集めた。ジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマン(ともに米国)らと名勝負を繰り広げ、81年にリングを去った。戦績は61戦56勝(37KO)5敗。世界ヘビー級王座は19度防衛した。

 自身を「グレーテスト(最も偉大)」と称するなど強烈な個性で知られ、公民権運動でも積極的に発言した。

 引退後はパーキンソン病で長い闘病生活を送ったが、96年アトランタ五輪では開会式で聖火台に火をともして感動を呼んだ。2005年には米国市民最高の栄誉「大統領自由勲章」を受けた。最近では、米大統領選の共和党候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏が昨年末にイスラム教徒の入国禁止を唱えた際、暗に批判する声明を出していた。