WBC世界バンタム級王者の長谷川穂積(27=真正)が「地道な腕立て伏せ」の成果を発揮する。12日のダブル世界戦(東京・日本武道館)の予備検診が9日、都内で行われた。長谷川は同級9位ファッシオ(ウルグアイ)との6度目の防衛戦に向け、腕立て伏せを最近3カ月間続けた。デビュー後初の試みの結果、胸囲は1月のV5戦から2センチ増の87センチに到達。パワーアップした安定王者が4試合ぶりのKO防衛を果たす。

 地味な肉体改造の成果が数字で実証された。予備検診を終えた長谷川が、大きくなった胸を張った。「腕立ての効果ですね。毎日やったかいがあった」。

 プロデビュー後は持ち味のスピードを殺さないよう筋力トレはしなかった。しかし、5カ月前のマルドロット(イタリア)とのV5戦の前日計量で「写真を見て、胸が薄いなと感じた」。進化を求めて方針転換。「無理なく続けられるように」と1日35回限定で毎日の練習後に行ってきた。

 胸囲87センチはKO防衛に成功したV1、V2時の88センチより下回る。しかし、胸厚(胸板の厚さ)が前回から1・2センチ増した。ボクシング界では胸が厚いほどパンチ力が強いといわれる。長谷川は「見せかけだけですよ」と控えめだが、4試合ぶりのKOに期待大だ。

 初対面のファッシオの弱点も発見した。あごの長さと顔の大きさを指摘。的の広さも好材料だ。減量中にもかかわらずこの日の長谷川の体温は35度2分と平熱。これも好調の証し。「いい意味でリラックスできている。前回より試合を楽しめそうです」。風格すら漂う王者に、死角は見当たらない。【大池和幸】