<全日本:東京大会>◇8月31日◇東京・両国国技館◇1万200人

 全日本マットで行われた初のIWGPヘビー級タイトルマッチは、ホームの武藤敬司(45)が21分13秒、月面水爆からの体固めで新日本のG1クライマックス(G1)覇者後藤洋央紀(29)を破り、2度目の防衛に成功した。G1史上初の初出場初優勝を成し遂げた新日本の若きエースの勢いに押されたが、最後は貫禄(かんろく)の勝利。試合後、極悪軍団GBHの真壁刀義(35)が次期挑戦者として名乗りを挙げた。

 これがプロレスリングマスターだ。大技「牛殺し」「昇天」、ラリアット3連発を耐え抜いた武藤が、後藤の両足をトップロープにかけた。こん身の力を込めた逆転のネックスクリュー。大歓声に後押しされ、最後はシャイニングウィザード5発からの月面水爆で勝負を決めた。「若い者より練習している」。45歳の王者は高らかに言い放った。

 肉体維持のため、努力を怠らない。若手が午前11時から始める練習を、武藤は同9時から始める。全盛期に1日約2時間こなした練習量は、自然と3~4時間に増えた。今でもベンチプレスは全盛期と同じ190キロを上げる。「臆病(おくびょう)だから練習しないと不安」。天才の名は努力の結果でもあった。

 その姿勢は武藤の地元、山梨県庁も動かした。同庁では18日~31日まで防災訓練参加促進CMを、地元テレビ局で放送。8社16案の中から武藤出演のものが選ばれた。武藤の練習シーンが流れて最後に「訓練は裏切らない」という言葉が入る。同県広報課は起用の理由を「防災も日ごろの訓練が大事。武藤さんの姿勢に一致した」と話した。真壁の挑発にも「挑戦者は新日本に一任。でもああいうタイプは嫌いじゃない」と余裕のコメント。長期政権も視野に入った。【塩谷正人】