現役引退を表明した武蔵(36=正道会館)が、K-1の「WORLD

 GP(WGP)開幕戦」(26日・ソウル)出場権を獲得した。K-1を主催するFEGは1日、WGP出場の全16選手を発表。武蔵はファン投票6位で、上位3人に与えられる主催者推薦枠に届かなかったが、幸運にもケガ人や辞退者が出て、推薦枠に滑り込んだ。1回戦でジェロム・レバンナ(フランス)と対戦。「記憶に残る選手になりたい。でっかい花火を打ち上げたい」を意気込んだ。

 思いは通じた。武蔵が、先週の引退会見で、最初で最後のわがままとして出場を直訴したWGPへの切符を手にした。都内で結果を聞いた武蔵は、一瞬だけ安堵(あんど)の表情を見せて言った。「最後はファンのために戦いたい気持ちがあった。結果的には、ファンのみなさんにリングに上げてもらうことになった」。だが、「裏切れないですね」と、すぐに表情を引き締めた。

 ファン投票6位の武蔵は同3位までの推薦枠には入らないはずだった。だが、不思議な「追い風」が次々と吹いた。大会出場が決まっていた13選手のうち、サキ(トルコ)の負傷欠場が決定。これで、ファン投票による推薦枠が1つ増え、さらに、ファン投票上位のミルコ・クロコップ(クロアチア)が、米総合格闘技UFCとの契約の関係で出場が不可能になった。

 さらに主催のFEGは、WGPで2度の準優勝を誇る武蔵の実績を考慮。投票では圏外の6位ながら、9票差で5位のモロサヌ(ルーマニア)に実績で勝るとし、最後の推薦枠に武蔵を推した。谷川イベントプロデューサーは「過去の実績と本人の決意をくんで、武蔵に決めた」と説明した。

 1回戦で戦うのは、同じ36歳のレバンナ。武蔵は「日本のファンの前に姿を見せるのが今の夢。相手は長く一緒にやってきた仲間だが、全力でぶつかりたい」。1回戦を突破して、日本で行われる決勝大会(12月5日・横浜アリーナ)で、ファンへ最後の別れを告げる決意だ。

 「記録も大事だが、記憶に残る選手になりたい。そのけじめとして、デッカイ花火を打ち上げたい」。格闘家人生は、ほどなくして散る運命にある。だがその前に、武蔵はまばゆい光を力いっぱい放つ覚悟だ。【森本隆】