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 EVENTS>◇4日(日本時間5日)◇米ハワイ州ブレーズデル・アリーナ◇2500人

 総合格闘家・石井慧(23=アイダッシュ)がKO勝ち寸前でまさかの反則負けを喫した。巨体のマイルス・ティナナス(35=米国)と3分3回で対戦し、課題とされた左足キックやパンチで効果的に攻めた。1回終了間際、強烈な左フックを相手のあごにヒットさせてダウンを奪うも、終了ブザーに気付かず、倒れた敵に攻撃を続け、反則負けを宣告された。09年大みそかの吉田秀彦戦以来の黒星となり「相手は運が良かった」と悔しさをにじませた。

 思惑通りに進んでいた…はずだった。1回終了ブザーが鳴り始めた時、石井が金網際に追い込んだティナナスのあごをとらえた。強烈な左フックを浴びせると敵の巨体は前のめりで崩れ落ちた。打撃で初ダウンを奪い、さらに攻撃するとレフェリーが制止。立ち上がらない敵に不満そうな表情の石井が宣告されたのは、予想外の反則負けだった。その不可解な判定に会場から大ブーイングが起こるほどだった。

 選手契約を結ぶSRCの試合は1回が5分ルールとなる。当初から石井も主催者側に3分から5分への変更を強く要望したが、試合進行上の問題で却下されていた。「あと2分あれば」「レフェリーがすぐに体を入れて止めてくれたら」との思いが悔しさを募らせる。石井は「敵のあごに的確なパンチを当てた。そこでブザーが聞こえなかった。あと2分あれば終わっていた。相手は運が良かった」と唇をかんだ。

 左フックは4月上旬、ボクシング亀田3兄弟の父史郎氏に「その左はえげつない。誰でも倒せる」と絶賛された打撃だった。「このロシアンフックは練習でもさえわたっていましたからね。左ミドルキックも出せた。相手の動きが遅く見えましたし」と十分すぎる手応えがあった。だが09年大みそかの吉田戦以来の黒星となるため「打撃で65点かな」と浮かれることなく、自己採点も辛めだった。

 視察に訪れていた、国内試合契約を結ぶSRC向井徹社長は「(1回)5分ならば、しっかり倒したはずだ。かわいそうな結果。大みそかに比べたらはるかに動きは良くなっている」と成長ぶりを確認。5日に行う石井本人との交渉で、今夏に予定する興行への出場オファーを出す方針を示した。戦績上は黒星となったプロ4戦目だが、石井にショックはない。立ち止まることなく、最強への道を突き進んでいく。(ハワイ=藤中栄二)