<新日本:東京ドーム大会>◇4日◇4万2000人

 棚橋弘至(34)が、師匠と兄弟子超えを同時に果たした。IWGPヘビー級選手権試合は、挑戦者の棚橋が21分57秒、ハイフライフロー2連発からの片エビ固めで王者小島聡(40=フリー)を撃破。人気ゲーム「モンスターハンター」から発想を得たイメージトレで、小島の生命線である右腕を徹底攻撃した。武藤敬司(48)を上回る歴代2位の5度目の戴冠を達成。至宝を奪回し、プロレス界のけん引者になることを宣言した。

 東京ドームで受ける勝ち名乗りは、格別だった。両手を広げ、棚橋が4万2000人の拍手と歓声を浴びた。「チャンピオンになったぜー!」。昨年12月の前哨戦では、小島のラリアットを食らって声が出ないほどダメージを受けた。その恨みとばかりに、美声をとどろかせた。

 ラリアットで勝ち続けてきた小島に、なりふり構わぬ戦いを仕掛けた。序盤から低空ドロップキックに、フットスタンプ3連発。すべて右腕に集中させた。「泥臭く。オレらしくなくても勝てればいい」。右腕を破壊するイメージで戦った。人気テレビゲームからアイデアを得た「モンハン作戦」。怪物を討伐するゲームから発想を得て、腕の破壊力を鈍らせた。最後はハイフライ弾連発で仕留めた。

 20回目の新春ドーム大会。節目のビッグイベントのメーンで、体は自然に硬くなった。その心をほぐしたのは、初心に帰った練習だった。入門当時の恒例だったスクワット1000回を連日のように敢行。「何度もやってると、感覚がなくなって無になるんです。少しは緊張からも解き放たれる」。苦しかった練習に、心を救われた。

 小島に対して特別な感情はない。それでも、ともに武藤を師匠とする遠い兄弟弟子の関係だ。02年、全日本へ移籍する武藤に、2人とも誘われた。応じた小島とは対照的に、棚橋は断った。「新日本で成功したい」という思いからだった。前日会見でも「新日本で戦い抜いてきた意地を見せる」と、集大成の戦いを強調していた。

 これで5度目の戴冠。武藤を抜き、藤波辰爾の6回にあと1回と迫った。「これからのプロレス界、おれに任せてもらえませんか?

 大丈夫。おれは既に未来をつかんでいる」。泥臭い戦いの後は、ナルシストな男らしくカッコ良く締めた。【森本隆】