WBA世界バンタム級王者の亀田興毅(24=亀田)が、5年ぶりのメンチ切り復活で気持ちを高揚させた。7日に大阪府立体育会館で同級14位ダニエル・ディアス(27=ニカラグア)の挑戦を受ける興毅は5日、大阪市内のホテルで調印式に臨んだ。挑戦者と初対面し、06年8月の初世界戦前まで恒例だったメンチ切りのパフォーマンスを解禁。緊迫ムードを漂わせ、自らを鼓舞した。また今回の試合グローブに東日本大震災からの復興メッセージを入れることも発表された。

 地元大阪で恒例の儀式が復活した。調印式終了後、写真撮影に応じた興毅がディアスと向き合った。まったく目をそらさない。眉間にしわを寄せ、眼光鋭く威嚇し合った。10秒、20秒、30秒…、両陣営の関係者の制止が入り、ようやく48秒間で終了。メンチ合戦が終わろうとした瞬間には興毅が「ペンデホ!」と叫んだ。スペイン語で侮辱を意味する言葉を発するほどボルテージが上がった。

 06年8月のWBA世界ライトフライ級王座決定戦2日前の調印式以来、実に5年ぶりのメンチ切り復活だった。当時は初対面したランダエタをにらみつけながらキューピー人形を手渡した。しかし以後はトラブル防止のため、調印式や前日計量で対戦相手との接触を極力、控えていた。今回は両者の意地が激突し、異例のメンチ切りが展開された。

 興毅

 最初、ダニエル君はオレの目を見てなかった。オレは一生懸命合わせようとしたのに。テンションが上がる。いよいよやな。一方的にバチバチとパンチを打って完勝できるぐらいの実力差はあるよ。

 一触即発ムードも興毅にとっては試合を盛り上げるための儀式だ。東日本大震災の復興を支援する興行であるため、両者のグローブには「届け!!

 大阪の力」とのメッセージが入った。興毅は「ちょっとでも笑顔に、明るくなってくれたら。そういう気持ちをグローブに込めた」と明かした。強さとやさしさを兼ね備えたパフォーマンスで、興毅らしく自らの初防衛戦を盛り上げてみせた。【藤中栄二】