<プロボクシング:東洋太平洋ライトフライ級王座決定戦12回戦>◇6日◇東京・両国国技館

 東洋太平洋ライトフライ級1位井上尚弥(20=大橋)が予告KOを果たし、世界王座に王手をかけた。同級2位ヘルソン・マンシオ(26)との王座決定戦で、5回2分51秒TKO勝ち。予告通りの中盤KOで2本目のベルトを奪取し、大橋秀行会長(48)は次の6戦目に日本最速での世界挑戦にゴーサインを出した。標的はWBCかIBF王座が有力だ。

 井上尚が圧勝で世界に手をかけた。2回に左ボディーから右ストレートでダウンを奪った。3回からは得意の左フックにアッパーなど多彩なパンチに、接近戦を試す余裕も。5回に左フックからラッシュ。青コーナーでサンドバッグ状態にし、たまらずレフェリーがストップした。

 8月の日本王座戦は初の判定となり、今回は「ジワジワと崩し、接近戦なども試し、中盤KO」と宣言していた。有言実行にもちょっと不満そう。「打たれ強く頑張らせてしまった。もっと的確に攻めて戦意喪失させたかった。世界は遠いかな」と。

 世界を狙うだけに反省も、大橋会長はゴーサインだ。「3回以降はいい練習、いい経験。テクニックも存分に出し、左リードはストレートの威力」とベタ褒め。世界へも「自然とそうなるでしょう」と言った。

 日本王座の4戦目に続き、東洋太平洋王座の5戦目も日本最速タイでの奪取。次の6戦目は井岡一翔を抜く最速記録もかけた世界戦となる。陣営は4団体OKだが、WBOは指名試合、WBA王者は井岡だけに「統一戦がいい」と大橋会長。現時点ではWBCかIBFに挑戦が有力だ。

 ゴング1時間半前にはリングサイドにいた。弟拓真のプロデビュー戦に声援を送ったが「キャリアの差を見せられました」。兄の威厳を保ってニヤリ。「来年の新たな目標へいいスタート。(世界の)舞台に立てるなら死に物狂いで練習する」。14年は本当の頂点に立つ。【河合香】

 ◆井上尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日、神奈川・座間市生まれ。小1からボクシングを始め、相模原青陵高1年でインターハイ、国体、選抜の3冠達成。3年時に全日本選手権と国際大会プレジデント杯優勝。アマ通算75勝(48KO)6敗で7タイトル獲得。昨年のロンドン五輪代表を逃しプロ転向。163センチの右ボクサーファイター。両親、姉、弟の5人家族。

 ◆日本人のスピード世界王座奪取

 井岡一翔が11年に7戦目でWBC世界ミニマム級王座に挑戦し、5回TKOで奪取。5人目の挑戦にして最短記録を樹立した。2位の8戦目で奪取は辰吉丈一郎と名城信男、4位タイとなる9戦目が具志堅用高と井岡弘樹。世界ではセンサク(タイ)の3戦目が最速。元ムエタイ王者で75年にWBC世界スーパーライト級王座を獲得した。