プロレスデビューした大相撲の元関脇貴闘力(46)が25日、次戦の相手に元横綱で全日本の3冠ヘビー級王者曙との対戦を熱望した。日刊スポーツのインタビューに、46歳でプロレス界に飛び込んだ理由や、今後について熱く語った。

 試合後の1週間で、気持ちが変わってきた。直後は「プロレスは1回でいい」と話していたが、口をついたのは、次戦への闘志だった。

 貴闘力

 ビデオで試合を見たら、あまりにも動きが悪い。まだ、あの3倍くらいは動ける。試合後の痛みが快感に変わってきた。店をやってる方が楽だけど、何か刺激が欲しいと思うようになった。

 コーチ役の初代タイガーマスクの佐山氏は「試合はすごく良かったし、本人の資質を感じた。また夏以降に大きい会場でやりたい」と、次戦への構想をぶち上げた。試合後から佐山氏の元には全国各地から試合のオファーが届いている。

 貴闘力

 もうちょっと練習するよ。曙あたりとやったら面白いんじゃないの。曙がやるなら、いつでもいい。デビュー戦みたいなら話にならない。(曙が)持ち上がるかな。

 曙は大相撲時代の得意な相手。獲得金星9個のうち実に7個奪った。デビューが決まり、1日5時間のトレーニングを積んだ。現在110キロだが「幕内上位なら相撲で勝てる自信がある」。日本相撲協会を野球賭博で解雇され、食べていくため焼き肉店を始めた。今では、10店舗を経営する実業家。食べるためにプロレスをやる必要はないが、あえて未知の世界に飛び込んだ。

 貴闘力

 46歳で、30代ぐらいの体力に戻して頑張ったら、世の50代のおじさん連中のやる気が出てくるでしょう。大失敗しても頑張れば、復活できるやんか、というところを見せたい。

 貴闘力が仕事の合間に体を鍛える理由はほかにもある。それは、自分を解雇した相撲界への恩返しだ。

 貴闘力

 縁あって大横綱大鵬の孫を授かった。長男(幸男)は格闘家になったが、次男以下の3人が力士を目指している。大鵬のDNAを関取、横綱に育て上げることが協会への恩返しになる。

 親方業ではつまずいたが、子育てでつまずかない。

 貴闘力

 あのまま定年まで親方を続けていたら、アホな親方で終わっていた。社会で勉強させてもらって、今やったら日本一の親方になれた。それがかなわないから体を鍛えて、息子たちを助けたい。

 現役時代の相撲のように、貴闘力の気持ちは今も熱い。【構成=桝田朗】

 ◆貴闘力(たかとうりき)本名鎌苅忠茂。1967年(昭42)9月28日、神戸市生まれ。83年春場所、藤島部屋(後の二子山部屋)から初土俵。突き押しと張り手を武器に、最高位関脇。00年春場所、前頭14枚目で史上初の幕尻優勝を達成。三賞14回受賞。金星9個。02年秋場所限りで引退し年寄・大嶽襲名、大鵬部屋の部屋付親方に。その後大鵬親方の定年に伴い部屋を継ぎ、大嶽部屋を興したが、10年7月に野球賭博で解雇された。東京・江東区などに焼き肉店経営。181センチ。

 ◆デビュー戦VTR

 16日のリアルジャパン代々木大会(代々木第2体育館)で、鈴木みのると組み、大仁田厚、矢口壹琅組と対戦。いきなり大仁田の毒霧攻撃を浴び、有刺鉄線ボードに背中からたたきつけられた。有刺鉄線バットでの攻撃も受けたが、ひるまずキックや張り手で応戦。最後は11分10秒、矢口を強烈な左張り手で1回転させ3カウントを奪った。気迫を前面に出し、会場を沸かせた。