坂田陣営の協栄ジム金平桂一郎会長(44)が「因縁の一戦」へ先制パンチを浴びせた。WBA世界フライ級王者亀田大毅(21=亀田)-同級5位坂田健史(30=協栄)戦前日の24日、都内で調印式と前日計量が行われた。金平会長は調印式で資格停止中の亀田ジム五十嵐前会長が立会人と接触したと突然指摘。ルールミーティングには、持参したパソコンで大毅の映像を流して反則への注意を呼びかけた。決戦前に亀田陣営を揺さぶった。計量は大毅と坂田がともにリミットの50・8キロで一発クリアした。

 これが因縁の一戦にかける執念なのか-。金平会長は調印式で突然、亀田ジム吉井会長に「昨日、五十嵐前会長が東京ドームホテルで(立会人)キム氏と接触したと報告を受けたが指示ですか?」と問いかけた。3月の父史郎氏の「どう喝騒動」後、五十嵐前会長はクラブオーナーとプロモーターの両ライセンス無期限停止処分中だ。吉井会長は「初耳です」と言うのがやっと。疑惑を晴らそうと、亀田ジムの嶋マネジャーが「トレーナーをチェックインさせて、たまたま居合わせたのであいさつしただけ」とマイクで主張した。

 これに金平会長が「じゃーいいですかー。ライセンス停止中の人間がいてはいけないのではないですか」とトーンを上げた。亀田側は3月の興毅-ポンサクレック戦で、相手側と立会人との密会疑惑を指摘していた。その時と同じ指摘をされた形にもなり、亀田側は動揺が隠せない。金平会長の「(大事なのは)明日は全力を尽くしてやるってこと。クリーンでみんなが納得できる試合になると信じたい」との言葉に、嶋マネジャーもうなずくしかなかった。

 ルールミーティングでは「パソコン導入」で追いうちを掛けた。協栄陣営はレフェリーらに2月の大毅の世界戦映像を見せ「お互いにけがをさせたくないのでレスリング行為に注意してほしい」と呼びかけた。口頭ではあっても映像での呼びかけは異例。関係者が画面をのぞき込むのを亀田側は見つめるしかなかった。

 そんな「場外戦」にも選手は冷静だった。大毅は「試合に集中するだけ。向こう(坂田)もそうやと思う」と語り、坂田も「勘弁してほしい」。だが、協栄とかつての所属選手である亀田兄弟には、対立を繰り返してきた歴史がある。決着前日、その「因縁」の炎をさらに燃え上がらせた金平会長は「これは疑念を持たれかねないこと。とにかく警鐘を鳴らしただけ。揺さぶりじゃないですよ」と涼しげに、にやりと笑った。【浜本卓也】