九重部屋が30日、先代(元横綱千代の富士、享年61)の死去に伴う師匠交代後としては、初めての稽古を東京・墨田区内の部屋で行った。

 先代から部屋を引き継いだ九重親方(40=元大関千代大海)は「まだ師匠1日目。何かが変わるというわけではないけど、いい緊張感を持って指導できればと思います」と抱負を語った。先代と現役力士は親子ほどの年の差があったが“青年師匠”は「つい7年前まで自分も現場で相撲を取っていた。より近い目線で、効率良く教えられるかなと思う」と自分のカラーを打ち出した。

 一方で、伝統は守る。「今の子は中途半端に器用すぎる。押し相撲なのに、まわしを取りたがったり。『お前の相撲はコレなんだよ』というのを頭にたたきつけるのが九重の指導」と話し、稽古中も若い衆に「我を貫き通せ!」と叱咤(しった)するシーンも。稽古全体は「1人1人の目つきが良かった」と“新生九重丸”の船出に及第点をつけた。

 7月31日の先代死去から約1カ月。涙にくれた力士たちも前を向いている。西前頭4枚目で部屋頭の千代鳳(23)は「今の師匠から言われること(助言など)は先代から言われるのと一緒。両方の師匠が言われることをしっかりやって自分の相撲を磨きたい」と話した。先代が7月に入院した日(2勝3敗)から6連勝し勝ち越しを決めたという千代の国(26)も「あの時は人が変わったように不思議な力がわいてきた。勝ち越した時は意識があって喜んでくれたみたいです」と故人をしのびつつ「代が代わって(部屋が)変わったと言われたくない。最大限の力を出すだけです」と胸に秘めた決意を口にした。