大関豪栄道(30=境川)が平幕玉鷲を寄り切りで下し、14連勝で涙の初優勝を決めた。

 3月の春場所から半年も続く「綱とり物語」の主役は、稀勢の里から豪栄道に引き継がれた。想定外の流れにも八角理事長(元横綱北勝海)は「稽古の下地があったからこそ。稽古はうそをつかないということ」とほめながら「連勝で(優勝まで)来るとは思わなかった。部屋全体でつかんだ優勝。立派だ、14連勝は」と称賛。横綱昇進を預かる横綱審議委員会の守屋委員長も「場所前、どれだけの人が豪栄道がこの成績を挙げると予想したでしょう。稀勢の里みたいにプレッシャーをまともに受けるのでなく上手に相撲の糧にしている」と賛辞を送った。

 かど番場所から一転、11月の九州場所が綱とり場所になることは、誰も包み隠さなかった。「2場所連続優勝もしくは、それに準ずる成績」という横審の内規から、八角理事長は「規定があるわけだからね。それに向かってね」と明言。さらに「なかなか全勝優勝はできない。チャンスなんだからやるべき」と全勝優勝に期待した。守屋委員長は「3人の横綱に勝って優勝なら反対はできない」「12勝3敗の優勝ならマズイんじゃないか」「高いレベル? そういうこと」と明言は避けつつ具体的な条件に言及した。

 九州場所が綱とりになることを「当然、そうなる」の言葉で示した二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)は「全勝で行ってほしいね」と「全勝」の2文字が、来場所へ微妙に影響を及ぼすことを暗に示唆。守屋委員長も「響きが違う」と千秋楽に期待した。

 ◆最近のかど番優勝 08年夏場所で14勝1敗で優勝した大関琴欧洲は、翌名古屋場所が綱とり。それまで「2場所連続13勝以上」をメドにしていた北の湖理事長(当時)は「今場所と同じかそれ以上」と事実上、14勝以上を条件につけ、横審の海老沢委員長(当時)も「これまでの印象(=成績)が悪い。両横綱もしくは横綱1人を少なくとも倒すことが必要」と明言。「大関での勝率が悪い」として、綱とり場所ではないと話す委員もいた。