左上腕付近に負傷を抱える横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が西前頭3枚目の碧山を寄り切って、旭天鵬に並ぶ史上8位の幕内697勝目を挙げた。大関時代に幾度となく苦杯を喫した相手を盤石の寄り。中日8日目を2敗で折り返した。白鵬と日馬富士の両横綱は危なげなく勝ち越した。2横綱の中日全勝並走は、15年名古屋場所の白鵬と鶴竜以来。

 取組にかけた時間は32秒7。危ない場面は1度もなかった。稀勢の里は今場所初めて、盤石の左四つの型を貫いて勝った。

 離れて相撲を取られると圧力と引き技がある碧山。そうはさせまいと右から張って左を差す。狙い通りに組み止め、右上手も引く。大関時代、大事な場面で幾度となく煮え湯を飲まされた相手を、じっくりと仕留めた。けがの影響を感じさせない横綱に、3場所ぶりに対戦した碧山も「普通じゃないですか? 右を張って左を差して…完璧でしょ」と脱帽するしかなかった。

 左上腕付近のけがで相撲勘を戻しきれなかった初日。4日目には初金星も許した。だが5日目から、左胸から腕にかけたテーピングの本数は、1本減らして2本になった。自ら付け人に指示した。本場所の相撲を経るごとに、状態は確実に上がっている。左も次第に使えてきた。本人も初日と比べて「いいんじゃないですか」とうなずいた。

 幕内697勝。旭天鵬に並び、あと4勝で貴乃花に追いつく。だが、この記録は「長くやっているからでしょ」と意に介さない。それより2敗はまだ優勝圏内。あきらめていない。「思い切っていくだけ」。後半戦へ、目が輝き始めた。【今村健人】