劇的な逆転勝ち越しはならず、背中を後押しする歓声は落胆のため息に変わった。

 陥落した幕下で4場所目を迎えた今場所、3連敗スタートから3連勝と盛り返した東幕下19枚目の豊ノ島(33=時津風)が、今場所最後の7番相撲に登場。西幕下15枚目の天空海(26=立浪)に押し出しで敗れ3勝4敗。2場所ぶりの勝ち越しを逃した。

 立ち合いからの流れで右がきれいに入り、休まず出た。だが「すっぽ抜けた感じ」(豊ノ島)で左の脇が空いたところを深く差されバンザイの体勢に。体を入れ替えられ、何とか回り込もうとしたが最後は押し出された。

 ここ数日、「突き落とされて転がされてもいい。前に出る相撲を取ろう」と言い続けてきた。この日も「前に出ようという意識で、それが自分を生かせる一番の相撲だから」と敗れて悔いなしの心境なのか「仕方ないです。これも経験、勉強の1つ。残念だけど、この悔しい思いがあれば(今後も)相撲が取れる」と淡々と話した。さらに「ここで負け越して、思うところも全くないわけではないけれど」と序盤の3連敗中にも頭をかすめた引退の2文字も「いろいろな人と(関取に)戻ると約束している。今やめれば悔いが残るし、このままでは終われない」と熱い思いを口にした。

 場所前の稽古で陥落の原因となったケガをした、あの1年前の名古屋から1年。スタートラインに戻ったつもりで、7月の名古屋場所に臨む。