今場所、プロの初土俵を踏んだ昨年のアマ横綱で、幕下15枚目格付け出しの矢後(22=尾車)が、最後の7番相撲で5勝1敗同士で東幕下19枚目の霧馬山(21=陸奥)と対戦。寄り切りで敗れ、白星で締めくくれず5勝2敗でデビュー場所を終えた。

 相手は、自分より50キロ以上も軽いがモンゴル出身で足腰の強さ、バネには定評がある。相撲にもそれが表れ、左四つに組んだものの右の上手を取れず、頭をつけられる苦戦。差し手をほどかれ、離れた瞬時をつかれ、もろ差しを許してしまった。完全に腰が浮き回り込めず、寄り切りで土俵を割った。

 相手に食い付かれ土俵中央で止まった時間が長かった。約1分を要した一番に、肩を大きく揺らしながら「ちょっと止まってしまって残念。右(上手)が遠かった」と息せき切って話した。3番相撲でプロ初黒星を喫し、1場所での新十両昇進の可能性は消えたが、切り替えてから3連勝。「勝ち越した時点で残り全部、勝つつもりでいたので(この日の)最後も勝ちたかった」と悔しがった。それでも2敗目の一番を「攻め急いだのかもしれません。前に出る圧力が足りないのかもしれません」と、敗因を分析する前向きな姿勢があった。

 幕下15枚目の位置で5勝(2敗)の力士は、最近4例をみると、翌場所の番付を同7~9枚目に上げている。新十両昇進には全勝が求められそうだ。仮に6勝1敗だったら、西3枚目まで上げた逸ノ城の例があり、その位置なら他力士の勝敗にもよるが5勝でも上がれる可能性があった。それだけに、大きな星を落としたことになるが、無い物ねだりは矢後の頭にない。1日に何番も取ることがあるアマとの違いに「プロの世界は、やはり違います。今までと違って何日か(取組)が空いたり、連続だったり。そこがちょっと難しかった」と戸惑いながらも、1場所経験したことは大きい。「5番勝ちました。また稽古で頑張ります。コツコツと1番1番、頑張ります」。猛暑が予想される7月の名古屋場所に、心を向け始めた。