大相撲夏場所で11勝を挙げ、大関昇進を確実にした関脇高安(27=田子ノ浦)が千秋楽から一夜明けた29日、東京・江戸川区の部屋で会見した。兄弟子の稀勢の里と優勝力士の白鵬の2人の横綱からはエールも送られた。立ち合いの「かち上げ」を代名詞に迫力ある相撲を磨き上げて、1場所15日制となった49年夏場所以降、新大関初の全勝優勝を目指すことを宣言した。

 土俵上で見る険しい顔は当初、さすがに消えていた。戦い終えた高安の表情は笑みも浮かぶほど穏やか。「何とか結果を出せてうれしい気持ちと、緊張感から解放された気持ちがあってホッとしています」。だが、大関の話題になると、自然と引き締まるのは勝負師のさが。「中途半端な覚悟では取れない地位。模範になる、堂々とした大関になりたい」。覚悟を語った。

 大関で戦う。そのための武器に自信も深めた。それは「かち上げ」。「自分で導き出した、しっくりくる立ち合いです」。以前から稽古場で、稀勢の里相手に何度か試し「圧力が通じることが何回かあったので、味をしめました」。今年初場所では白鵬も圧倒した。

 その2人の横綱からエールも届いた。稀勢の里には前夜の千秋楽パーティーで「おめでとう」と声を掛けられた。白鵬には「迫力ある大関になってほしい」との言葉をもらった。「感謝の言葉しかない」「ありがたい」と話す高安は「もっと鍛え込んで、どんな相手も起こせるような、どこから来てもはじき上げるような、力強いものをもっとつくりたい」と誓った。

 大関になれば、その上の地位は1つしかない。当然、視界に入っている。「次は優勝を目指してやります。優勝しないと、その上には上がれませんから」。昭和以降、新大関の優勝は6人だけ。そして、新大関の連勝は1場所15日制で見れば「11」が最高。全勝優勝はいない。それでも「15日間、全部勝つつもりでやる。悔いを残したくない。力尽きるまで一生懸命やりたい」。険しい道ほどやりがいを感じる。それが高安。【今村健人】