大相撲の横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が15日、青森市で行われた夏巡業で、復帰後に初めて土俵に上がった。双子の弟で十両復帰を狙う幕下貴源治(20)に約4分間胸を出し、土俵を下りてからもその弟に熱血指導を行った。ただ、横綱は土俵上の相手を兄の幕下貴公俊(たかよしとし)と勘違いしていたことも判明。何はともあれ、少しずつ回復の兆しを見せている。

 土俵上で黙々と四股を踏んでいた稀勢の里が、前へと歩を進めた。胸を出そうとする貴景勝に代わり、貴源治の前に立った。「いい稽古をしていたから、どうかなと思って」。復帰した10日の茨城・日立市の夏巡業から6日目。初めて土俵に立ち、期待の若手にぶつかり稽古で胸を出した。4分間。「非常に良かったんじゃないですか」。それは貴源治だけでなく、自身にも向けられた言葉だった。

 これまで花道での基礎運動はあったものの、土俵には上がらなかった。裏を返せば関取クラスに、胸を出せる状態になった証しだ。「土俵の上で四股を踏むだけでも違う。体のバランスが、下で踏むより良かった。1時間半くらいかな、いい稽古だった。非常に疲れましたよ」とうれしそうだった。

 充実したからこそ“課外授業”は続いた。土俵を下りると再び貴源治に声を掛けた。「兄貴? 弟?」と確認し、弟と知った上で四つに組み、まわしを取らせる。足が浮くほどの引きつけの力に「おぉ、強いな」と感心し「まわしをすぐ切る稽古をしたら、すごく強くなるよ」と助言した。

 双子の弟へ“2度”にわたる熱血指導。ただ、横綱は「あれ? 土俵も貴源治だったの? 兄貴(貴公俊)だと思ってた」。うり二つゆえの勘違いはご愛嬌(あいきょう)。少しずつ、復調している。【今村健人】