関脇御嶽海(25=出羽海)が東前頭2枚目嘉風を引き落とし、幕内昇進後初のストレート給金に王手をかけた。昨年九州場所も関脇で9勝しており、今場所2桁勝利を挙げると、春場所での大関とりが現実的になる。幕内でただ1人全場所で勝ち越しを決めた昨年の勢いで、2桁白星も初優勝も狙う。勝ちっ放しは横綱鶴竜と2人だけになった。

 支度部屋に戻って風呂から上がり、帰り支度が整った御嶽海は、テレビにくぎ付けになった。全勝同士の対決となった、鶴竜と栃ノ心による結び。白熱した一番を見届け、支度部屋を後にした。幕内前半で朝乃山も敗れ、全勝は自分と鶴竜だけになり「そうだねぇ」と少し口角を上げたが、目は真剣だった。

 危なげない相撲内容だった。右肩から当たって前に出たが、1歩引いた。一瞬止まり、前に出たところを嘉風にはたかれたが落ちない。さらに前に出て土俵際に追い込み、絶妙のタイミングで引き落とした。「流れは良かった」と振り返る通り終始、御嶽海ペースだった。幕内後半戦の藤島審判長(元大関武双山)も「相手がよく見えている。深追いせずに(運動)神経がいい」と評価。さらに「伸び盛りで1日1日、良い意味で勘違いして急に覚醒する時もある」と、今後の急成長に期待した。

 今場所で2桁白星となれば、春場所は大関とりが現実味を帯びる。大関昇進の目安は、三役で直近3場所33勝。昨年九州場所は9勝のため、今場所での上積みがカギになる。春場所後の4月には、地元・長野で春巡業も控えている。大関とりに関しては「そこは意識しません」と話すが、地元での巡業に関しては「応援してくれる人もたくさんいる。もちろん、良い形で戻りたい」と意気込む。大関昇進で凱旋(がいせん)となれば、最高のファンへの恩返しだ。

 ストレート給金に王手をかけ、全勝も2人だけ。だが「まだ7番ですから。ここからじゃないですか。一生懸命やるだけです」と冷静。国技館を出る際は、待ち構えた多くのファンから「優勝しろよ」と、声をかけられた。まずは今日、自身初の幕内での中日勝ち越しを決め、優勝と大関とりへの足がかりを作る。【佐々木隆史】