異例の誓約書同意で年寄襲名が認められた。日本相撲協会は9月30日、東京・両国国技館で理事会を開き、横綱白鵬(36=宮城野)の引退と年寄「間垣」襲名を承認した。全親方衆が協会と結ぶ人材育成業務の委託契約の他に、協会は白鵬に対して誓約書への同意と了承を要求。現役時代に度々、物議を醸す言動を行ってきた横綱に対して、自覚ある行動を求めた。年寄襲名にあたり、誓約書を求めるのは初となった。

   ◇   ◇   ◇

白鵬は秋場所千秋楽翌日の27日に、師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)を通じて協会に引退を申し出た。その3日後のこの日、協会が引退と年寄襲名を正式発表。現役時代の立ち居振る舞いが問題視され、年寄襲名は一筋縄ではいかなかった。

引退と年寄「間垣」襲名希望の申し出を受けて、協会の八角理事長(元横綱北勝海)は年寄資格審査委員会を招集した。29日に開催された同委員会では、厳しい意見が相次いだ。白鵬は5月に年寄「間垣」を継承。その際に同委員会は、白鵬に対して自覚ある行動を求めた。しかし、7月の名古屋場所で優勝した際に土俵上でガッツポーズをして八角理事長から厳重注意。協会に報告なく、8月の東京五輪の柔道会場に足を運んだことなどが問題視された。同委員会からは、年寄襲名にあたり「10年間は部屋付き親方として親方業を習熟すべき」などの条件付きを求める声が上がった。

29日開催の同委員会では年寄襲名は採決されず、報告を受けたこの日の理事会に諮られた。理事会でも厳しい意見が出たが、誓約書付きの承認となった。同委員会の今井環委員長と尾車理事(元大関琴風)が、宮城野親方と白鵬に対して誓約書の内容を説明。「新人の親方として、理事長をはじめ先輩親方の指揮命令・指導をよく聞き、本場所等、与えられた業務を誠実に行うこと」、「大相撲の伝統文化や相撲道の精神、協会の規則・ルール・マナー、相撲界の慣わし・しきたりを守り、そこから逸脱した言動を行わないこと」。内容に同意、了承した白鵬が誓約書にサインして、「間垣」襲名が正式決定した。

異例の誓約書付きでの年寄承認。芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「これは白鵬に期待があるから。今後の協会を守ってもらうため」などと説明した。現役時代に数々の記録を打ち立てた半面、粗暴な取り口や独善的な立ち居振る舞いが批判を招くことも多かった第一人者。土俵を去っても、今後の言動に注目が集まる。1日に行われる引退会見で、胸の内を赤裸々に明かす。【佐々木隆史】

◆年寄資格審査委員会 親方になるために必要な年寄名跡襲名について議論する。親方衆5人と、外部委員1人で構成される。

◎白鵬の直近の行動

5月 年寄「間垣」を継承。年寄資格審査委員会から自覚ある行動を求められる。

7月 名古屋場所で、大関照ノ富士との千秋楽相星決戦を制して45度目の優勝。その際、土俵上で派手なガッツポーズをして場所後に八角理事長から厳重注意を受けた。

8月 協会に報告なく、東京五輪の柔道会場に足を運び再び物議。

9月 秋場所は弟弟子の新型コロナウイルス感染の影響で全休措置が取られ、同場所後に協会に引退を申し出た。