一人前の男役としての節目となる「10年」を終えた宙組の澄輝さやとが、宝塚のバウホール公演に初主演する。新人公演も最終チャンスで初主演をゲットし、晩成型を自任する。「お尻をたたかれていましたね」と笑うが、今回は大好きなショー公演「バウ・ショーケース New Wave!-宙-」でセンターに立つ。今日2日に初日を迎え、12日まで。

 宙組若手メンバーを率いてセンターに立つ澄輝は今春、11年目に入った。昨年の花組から、月組を経た若手によるショー公演が宙組にめぐってきた。

 「宙組でもやってくれないかなって思っていたら、中心でやらせてもらえることに。芝居は役名で出ますけどショーは違う。(客席下りもあり)お客さんとの距離も近いので楽しい」

 ファンの期待に負けないくらい、開幕を待ちこがれる。今回は過去の劇団の名曲や名場面を新たに演出し、振り付け。宙組2代目トップで、平成以降最長在位の和央ようか主演「ザ・ショー・ストッパー」(02年)の楽曲にも挑戦する。

 「本当にすてき。私はタンゴを踊ったことがなくて、大好きなリベルタンゴの曲で駆り立てられるように踊るのも楽しい。最初はたかこさん(和央)に少しでも近づこうと意識していましたが、今は私たちができる表現を、と」

 タンゴ以外にも初挑戦がある。ティンバレスだ。

 「ピアノは習っていて、部活でマンドリン、音楽学校で三味線はやりましたけど、打楽器は初めて。最初、先生(の実演)を見たときは、ポカーンって。けいこ中も、あちこちをポンポンたたいて。ラテンナンバーに入るので、そういう意味でショー・ストッパーにならないように(笑い)」

 どの質問にも、丁寧に言葉をつなぐ。11年目のバウ初主演は決して早くはない。新人公演もラストチャンスで初主演を得た。

 「下級生のころ、すごくお尻をたたかれていました。研7の最後(新人を)卒業するときにやらせてもらい、3年たってこの作品の真ん中。少しは認めてもらえたのかなと思います」

 気負い過ぎる自分の性格をコントロールする方法も分かってきた。男役10年の言葉を実感する日々だ。

 「最初は男役として立ち、歩くことも難しかった。新人公演でお芝居の楽しさを知り、今、男役の立ち居振る舞いが身について。ひとつひとつ積み上げれば、やっぱり10年かかるんだと思う。これからは、上積みしていく学年ですよね」

 宙組は新トップに朝夏まなとが就き、澄輝自身も上級生の立場になる。

 「自分の殻を破れるように、今回の作品が転機になれば。けいこ場では、親心のように下級生を見ちゃう。気付いたことは伝えていかなきゃと思っています」

 後輩の成長は刺激、人との関わりは栄養源だ。

 「ファンの方の言葉、拍手はもちろんですが、けいこ場でみんなとたわいもない話をするだけで元気になる。何かたまってきたら、しゃべって発散します」

 さらにオンオフの切り替えで、気持ちをよりリフレッシュさせる。

 「これまで家に帰っても(けいこを)引きずるところがあった。だから、パンッとその流れを切ろうと。自宅ではテレビ番組などを見て楽しんでいます」

 新生宙組を支える立場を受け止め、“澄”んで“輝”く名前のごとく、その瞳にはビジョンがはっきり見えている。【村上久美子】

 ◆バウ・ショーケース「New Wave!-宙-」(作・演出=三木章雄氏) 宙組若手メンバーが、往年の宙組名場面を再現。未来への飛躍を目指して、エネルギッシュな踊りを披露する。

 ☆澄輝(すみき)さやと 11月24日、神戸市生まれ。05年「エンター・ザ・レビュー」で初舞台。宙組配属。07年、6期スカイ・フェアリーズ。11年「クラシコ・イタリアーノ-最高の男の仕立て方-」で新人公演初主演。13年からスカイ・ナビゲーターズ。身長173センチ。愛称「あっきー」。