宗教法人「法の華三法行」の元代表で、信者への詐欺罪で懲役12年の刑に服した福永法源氏(70)の半生を描いた映画「塀の中の神様」(高橋伴明監督、来年4月公開)が製作されており、18日、都内の東映撮影所で発表会見が行われた。福永氏は本人役で出演。現在は「フリーの一般人」としながらも、会見では現状を聞かれ、口をつぐんだ。

 福永氏は刑務服に身を包み、自らが収監される場面を演じた。逮捕当時、強面だった顔はほっそりとし、目力も感じられなかった。取材陣を前にするのも2000年の逮捕前以来。撮影後の会見では、明らかに緊張し、か細い声で話した。

 「例の福永法源です。15年、刑務所に監禁された人間の映画をどうして撮るかと驚きました。『法の華』、(私は)関係していないが、(後継団体の)『天華の救済』のPRならごめんこうむると申し上げた。本名の福永輝義そのまま映画にしていただけるなら、喜んで出演させていただくと申し上げた」

 自著を基にした94年の映画「億万長者になった男。」に出演しているが「演じることは分からない。緊張の連続で頭は真っ白」と語った。昨年に出所。現状を聞かれると、「せっかくのご質問ですけれども、映画の出演に関することのみを答えさせていただきたいと思います」と回答拒否した。藤原慎二プロデューサーは「(福永氏は)教団とは関係ない。肩書はフリー」とフォローしたが、福永氏は今年4月、「天華の救済」が開催した「復活祭」に参加している。

 同作は、貧しい幼少期から就職して独立、手形詐欺に遭った福永氏が「法の華三法行」を主宰し、詐欺罪で収監された人生を描くという。その上で、被害者や批判的な弁護士を取材したドキュメンタリーを交えるとしている。

 巨額詐欺事件で罰を受けた福永氏の半生を描くことは、社会的批判を受けるリスクもあるが、高橋監督は言った。「センセーショナルな事件で、被害者をどう思うのかという疑問もあると思うが、僕の中で犯人の視点で映画を作ってきた姿勢は全く変わらない」。

 出演者には、島田陽子、大鶴義丹、奥田瑛二、哀川翔、不破万作らも名を連ねる。製作費は、投資家の資金を集める映画ファンドを軸に集めたというが、関係者は詳細を伏せた。全国37館での上映が決まっているという。【村上幸将】

 ◆「法の華三法行」詐欺事件 福永氏が80年に「キリスト、釈迦(しゃか)に次ぐ最後の救済者、法源をこの世に送り出す。全人類に法(宇宙の法則)の華を咲かせよ」という天の声を受けたとうたい、団体の活動を開始した。87年に静岡県知事の認証を得て宗教法人格を取得した。

 「足裏診断」で「このままではがんになる」などと不安と恐怖心をあおり、修行代などの名目で多額の資金を吸い上げる集金システムを確立。福永氏は190センチと長身で、講演会では大声で「最高ですか!」と声を掛け、カリスマ性を高めた。集金額は約870億円とされ、90年代中盤から修行代の返還訴訟などが相次いだ。00年5月9日に福永氏ら12人が詐欺容疑で逮捕され、05年7月に東京地裁から懲役12年の判決を受けた。08年8月に最高裁で刑が確定した。