演歌歌手の三山ひろし(35)が4日、初出演の映画「サクラ花~桜花最期の特攻~」(松村克弥監督)初日舞台あいさつで、平和への願いを熱く訴えた。

 第2次大戦末期に実在した、プロペラも車輪もなく、燃料も積まずに突撃するだけの小型特攻機「桜花」に乗った軍人の姿を、事実に基づいて描いた戦後70年企画で、三山はけん玉が得意な芸人を演じた。

 三山は「僕の祖母のお兄さんが、ニューブリテン島で戦死しております。そんな厳しい時代に(三山が)生まれ育つことがなくて良かった、という話を聞きまして。戦争というのは、誰しもが喜ぶことができない。気が付いたら、戦争の足音が近づいている状況が怖い」と、切々と語った。

 すると、年配の男性客から「安倍さんに言ってもらいたいね!!」と、安全保障関連法の成立などを行った安倍晋三首相への批判的な声が飛んだ。三山はそれを聞き「そうなんですね。なんでしょうかね…映画を見て、平和についてもう1度考えていただくと、いいんじゃないかと思いますね」と答えた。松村監督も「三山さんが今おっしゃったように、この映画は決して70年前の古い人ごとではなくて、現代の日本への警鐘でもあり、こうした戦争を2度と起こしてほしくない僕のメッセージです」と続けた。

 主演の大和田健介(24)は、大和田伸也と五大路子の次男で、五大の父は名古屋の勤労動員中に空襲を受けて戦死したという。大和田は、会場に父が駆けつけた中、「みんなでクランクイン前に1泊の軍隊合宿をしたり、訓練して一夜をともにして撮影に挑んだ。こういう事実を語り継がないと、という思いが強い。今、生きているという喜びを感謝に思いながら、ステージに立ち、皆さんにお会いできたのが幸せ」と熱く語った。

 作品の舞台となった茨城県鹿嶋市出身のキタキマユ(33)は、「小さい頃から、いろいろなところを駆け回っている故郷に、桜花という飛行機があったことを知らずに育ち、撮影に入って初めて知りました。私の生まれ育った茨城にも、桜花という飛行機に乗り命を散らせていった、国民のために戦っていた人たちがいるということを知っていただくきっかけになり、よりいっそう、皆さんが平和を願うことにつながる作品になるとうれしい」と涙を浮かべながら語った。