来年7月23日付で退団を発表した宝塚歌劇団雪組トップスター、早霧(さぎり)せいなが22日午前、大阪市内のホテルで退団会見を開き、あふれそうになる涙をこらえ、あふれる「宝塚愛」を存分に語った。

 「まだまだ宝塚の男役に夢中でいたい」

 「今このままの自分で止まっていられるなら、肉体も精神も体力も。ずっと宝塚にいたいんですけど、そんなの無理じゃないですか。だから私はスッと去っていきます」

 14年9月にトップ就任。最初の仕事が10年に1度の運動会だった。「頑張りたい、優勝したい気持ちが強すぎて、爆発しました」。比肩なき美貌の一方で、アツすぎるキャラクターで、ファンを魅了してきたが、トップ初仕事で「早霧・雪組」の方向性を決定づけた。

 15年1月の「ルパン三世」以来、ここまで本拠地4作品はすべて完売。とりわけ、収容の多い宝塚大劇場で、トップ就任から4作連続で、稼働率100%超えは、102年の劇団においても史上初。小川友次理事長も「今の劇団の勢いを担ってくれた。一時代を築いたトップとして、本当に頭が下がる」と最高級のことばでねぎらった。

 早霧は、身長168センチと男役としては小柄ながら抜群の運動神経を生かしたダンス、繊細な役作りに評価が高く、トップ就任後は「伯爵令嬢」「ルパン三世」「るろうに剣心」と人気漫画の原作ものや、名作映画「ローマの休日」と話題作に立て続けに主演。唯一無二のトップ像を確立した。

 順調に進んだトップ・ロードだったが、早霧自身は「ほめられると、どうしていいか分からないんですけど」と笑い飛ばしながら「神様からこうやって、アメをいただくと、いつかムチがとんでくるんじゃないかと思って、逆に恐怖の中で過ごしておりました」と振り返った。

 退団を決意したのは、今年2月、「るろうに剣心」の大劇場公演後。まずは同時退団する咲妃みゆに伝え、咲妃からすぐに「ご一緒したい」と言われ、同時に退団することが決まった。組のメンバーには、今月20日に伝えたといい、その話をする際には、早霧の目は赤く充血していた。

 もともと、小さいころから宝塚にあこがれて、レッスンしてきたわけではなく、学生時代に宝塚を知り、入団を決意。入団後には、男役にさらに魅せられ、かつて「男役は天職。この世界があってよかった」と話したこともある。

 それほど、入れ込んだ宝塚の世界だけに、早霧の心には、トップとして責任を果たした安心感と、寂しさがあるようだ。「入団前の私なら、今の自分に『よかったね、幸せ者』と言ってやります」とも口にした。

 退団後については何も考えられないようで「そのとき、自分が決断したことを、私を支えてくれた人たちと相談して、応援してくれるならそっちへ行きたい」とし、芸能活動の継続には「クエスチョンです」とした。

 また、恒例の結婚予定への質問には「女性としてあこがれはありますが、その前に、私は宝塚の男役にあこがれて、その道1本できたので、結婚にも目を向けてみたいですが、向けたところで誰もいません」と笑いながら答えた。

 そして、ちゃめっ気たっぷりに「だから、募集しております。でも、ファンの皆さんの期待を裏切りたくないので、ひそかに!」とジョークも続けて笑わせた。

 早霧の退団公演は、フランキー堺主演の名作映画をもとにした「ミュージカル・コメディ 『幕末太陽傳(ばくまつたいようでん)』」と、中村一徳氏が作・演出の「Show Spirit 『Dramatic “S”!』」の2本立て。宝塚大劇場は来年4月21日~5月29日。東京宝塚劇場は同6月16日に開幕し、早霧、咲妃はともに、7月23日の同東京公演千秋楽をもって退団する。