昨年7月に都内の自宅で、派遣型マッサージ店の女性従業員に乱暴したとして強制性交罪で起訴された俳優新井浩文(本名・朴慶培)被告(40)の初公判が2日、東京地裁で開かれた。

新井被告は女性に謝罪の言葉を述べた上で「暴力は一切、やっていません。同意があったと思っています」と起訴内容を否認した。この日は被害者女性が証人として出廷。別室にいる女性と映像と音声を通じて行うビデオリンク方式の証人質問で、当時の状況を詳細に明かし「(同被告に)刑務所に入って反省してほしい」と訴えた。次回は今月26日に行われ、被告人質問が行われる。

   ◇   ◇   ◇

黒のスーツに黒ネクタイ姿、短髪でヒゲもそった新井被告は、緊張したような様子で軽く一礼して法廷に入った。証言台の前で裁判長から名前を聞かれると「新井浩文です」。職業を質問されると「現在、無職です」と淡々と答えた。

起訴状によると、新井被告は昨年7月1日、東京都世田谷区内の自宅で、マッサージ店の女性従業員に乱暴したとされる。今年2月1日に逮捕、起訴され、同27日に保釈金500万円を納付し保釈されている。

裁判長から起訴内容について質問を受けると「謝罪の言葉を言いたいです。本当にすみませんでした」と女性に謝罪。起訴状については、「暴力は一切やっていません。同意があったと思っています」と否認した。弁護人も「手首をつかんで陰茎を押しつけ性交したのは事実だが、頭を両手でつかんで陰茎を口に押しつけたことはない。性交について合意があると誤解していたので、強制性交の事実はありません」と述べた。

冒頭陳述では、検察側が事件前から新井被告は店舗や出張型のマッサージ店を利用しており、女性が所属していた店舗もそれまで3回利用していたとし、「性的サービスを禁止しており、初回の利用には手続きがある。マッサージの施術を受け、興奮して犯行に及んだ」と指摘。

一方、弁護側は「マッサージをする中で性器ぎりぎりをマッサージされ性的な気分を催すのも珍しくはない。これまでも何度か性的な気分になり、手を伸ばしたこともあり、乗ってきてくれる女性もいた。中には誘ってくる女性もいた」。「(マッサージ中、女性の服を脱がし)胸をなめたり、陰部を触ると(女性は)小さい声で『ダメですよ』と言った。だが、膣(ちつ)がぬれているのを見て拒否していないと思い(女性の)陰部に挿入し、腹部の上に射精した」などと述べ、あらためて「暴行・脅迫を用いておらず強制性交等罪は成立しない」と主張した。

地裁にはこの日、20席の傍聴券を求めて532人が並んだ。

◆強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい) 刑法第177条。男性が加害者、女性が被害者という前提の「強姦(ごうかん)罪」の名称と内容が改正され、17年7月に施行。13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いて性交、肛門性交または口腔(こうくう)性交をする強制性交等の罪。5年以上の有期懲役に処せられる。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とされる。強姦罪と比べ、男性に対する行為や、口腔性交なども対象となり、罰則が厳しくなるなどが変更点。