<連載「気になリスト」(55)>

 2世芸能人として、にわかに注目され始めている。歌手ひとみ(23)。母親は歌手研ナオコ(59)だ。幼少から母の仕事場に慣れ親しみ、一緒に芸能活動も行った。小学生のころ、母、兄と一緒にCM出演した。旅行番組では家族でロケに行った。母親の娘役でドラマにも出た。父親も役者経験者。芸能界は生活の一部だった。「最近気がついたんです。普通の会社員の家に生まれたら、芸能界の人たちが怖いと思う。でも自分の場合、普通の会社のほうが、どうしたらいいか分からなくて怖い場所なんです」。

 芸能界入りを決めたのは高校3年の時だった。一貫教育の成城学園に通い、系列の成城大進学も考えた。文芸学部文化史学科志望で地方の伝説を探求する「史学」に興味があった。だが母への強いあこがれが背中を押した。母親のように歌で思いを伝えたい-。研には反対されなかったが、「本当にいいの?」という確認は何回もされた。「でも絶対駄目だとは1回も言われなかった。ただ、(歌が)好きだから仕事にすると、嫌だっていうこともやらなくちゃいけないとは言われた」。

 研の娘という事実を隠そうとしない。「インターネットとかあるので、隠したって意味がない。どうせ言われますから」。2世ということを前向きにとらえている。「楽屋にあいさつに行くと、ほぼ100%の確率で『お母さんによろしく』と言われます。中尾彬さん、中尾ミエさん、明石家さんまさん…」。屈託なく笑うが、謙虚な姿勢も忘れていない。「母の名前でいただいたチャンスは生かしたい」。

 目標は母親のような心に響く歌手になること。「母は自分より、緊張するタイプ。特に歌は、伴奏が始まったら直しがきかない。歌い始めると顔つきが違う」という。一方で母親を「ド天然ですね。急に変なこと言ったり」と分析する。マネジャーも「ひとみの方がしっかりしているかもね」と笑顔で話した。

 歌手として尊敬する一方で、困ったこともある。「収録現場に『一緒に行きたい』と言い出すんです。自分も共演者もやりづらい。この取材もそう。『今日仕事でしょ』とか聞いてきて」。そう言いながらも、表情は笑顔だった。【山田準】

 ◆ひとみ

 1989年(平元)8月8日、東京都生まれ。成城学園中、高校卒業後、大学に進学せず芸能界入り。08年に研ナオコ全国ライブツアーでコーラス参加。バラエティー番組などにも出演、13年公開予定映画「鵺

 啼くカルデラ」の主題歌「ヒトリミチ」を歌う。趣味は絵画、資格は小型船舶操縦2級。(2月8日付

 紙面から)