胃がん手術後に療養していた俳優市村正親(65)が3日、都内で会見した。胃の半分を摘出したが「克服して元気に戻ってきました」と全快宣言。6月下旬に急性胃炎で入院時、妻の女優篠原涼子(41)に精密検査を勧められたことが早期発見につながったという。

 市村は「妻の言葉がなかったら、早期発見できなかった。命の恩人です」と話した。6月下旬、魚料理が原因の食あたりで急性胃炎と診断された。1週間入院した。病状を心配した篠原が「もっと調べてほしい」と担当医に申し入れた。病理検査の結果、早期の胃がんと判明。7月26日に告知された。「予期しなかったけど、医学を信じようと思った。でも2人の息子(6歳と2歳)が小さいので、オヤジがこんなことになってかわいそうと思った」。同席した篠原と目を合わせ「来ちゃったね」と無言で思いを交わしたが、篠原の顔は真っ青に見えたという。

 8月初めの腹腔(ふくくう)鏡手術は4時間半にわたって行われ、胃の半分を切除した。篠原は手術室前で待っていたという。術後の検査で悪性部分は全て切除したことが分かると「妻と抱き合い、お互いに泣きました。言葉はなかったけど、妻の目に星がパーッと光って。僕も光っていたと思う」。

 退院して自宅に戻ると、次男は市村から離れようとしなかったという。「『パパ、大丈夫?』『これ食べなよ』と言ってくれた。僕がいなかった時に耐えていたんだなと思った」。振り返りながら涙をぬぐった。長男だけが病室を見舞ったという。「気が付く子で、リーダーシップをとって妻をサポートしていた。おなかの手術の傷を見せたら『あー、痛そう』って言った。家族って本当にいいなと思った。自宅療養中は子供との時間を楽しみたい」。

 先月13日は篠原の誕生日だった。「あなたが健康な体になったことが最高のプレゼント」と言われたという。この日は「命の恩人だから、あらためてプレゼントを考えます」と話した。

 入院で体重が4・5キロ減った。食事は1日4、5回で少量を食べる。篠原も病人食の本を買い、夫の料理を作っている。市村は「最初は離乳食で、また赤ちゃんが生まれたみたいだった」と笑った。ホットヨガ、ジムなどのリハビリに励む自分の姿に篠原も「また働けちゃうね」とちゃめっ気ある言葉で喜んだという。

 今後は月に1回の定期健診を受ける。「酒はやめないよ。週2日は休肝日にするけど」と笑った。あらためて妻への感謝の気持ちは増した。「いろんな宝をくれたけど、また1つの宝、自分の命をもらった気がする。3人兄弟(自分と2人の息子)をよろしくお願いしますと言いたい。女房、子供のためにこれからも、しっかり生きられるなと思った」。家族の絆を再確認した1カ月だった。【林尚之】

 ◆市村正親(いちむら・まさちか)1949年(昭24)1月28日、埼玉県生まれ。74年に劇団四季入り。「エクウス」「オペラ座の怪人」などに出演して劇団を代表する俳優に。90年退団。その後もミュージカル「ミス・サイゴン」など舞台を中心に活躍。07年に紫綬褒章を受章。05年に篠原涼子と結婚、08年に長男、12年に次男が誕生。170センチ。血液型A。