来年創立101年を迎える宝塚歌劇団が「ルパン三世」の初ミュージカル化に挑む。国民的人気作として親しまれて47年。その世界観がどのように宝塚で表現されるのか。100周年の今年は、ツアーも含めて「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」「エリザベート」と再演作ラッシュだったが、次の100年を見据えた挑戦をルパン三世でスタートさせる。連載「ルパン三世@宝塚」(全5回)を今日から掲載する。

 細身の体で華麗な身のこなし。神出鬼没。曲芸のようなアクションで、狙った獲物は必ず手に入れる。大泥棒ルパン三世を宝塚歌劇団、雪組の新トップスター早霧(さぎり)せいなが演じる。

 早霧

 子供のころアニメで見たことはありました。泥棒として超一流ですが、情にもろくて女に弱い。おっちょこちょい。正直、えっ、宝塚でルパンをやるんだ!

 私が?

 と。(ルパン三世のトレードマークの)もみあげは2部はショーがあるので描きます。

 宝塚では約5年前から舞台化のプランがあった。

 小林公一劇団理事長

 あるプロデューサーから5年ほど前、会議でルパンをやったらどうかと。権利関係の整理と適した生徒、配役の問題もあり、当時は決まらなかった。

 宝塚はトップスターのキャラクターに合わせ、上演作を決める「あて書きシステム」。何よりルパンに適任のトップが必要だった。8月に雪組の前トップ壮一帆が退団。新たに就任する早霧は168センチで現トップ5人のうち最も小柄だが、軽妙でコミカルな演技が得意。しかも、ほぼ「棒」と言っても過言ではないルパンを体現できる細身でもあった。

 小林

 格好いいけど、軽く、ひょうひょうとしていて、かつ男らしい。早霧の魅力とはまった。

 大野雄二氏作曲のおなじみのテーマ曲の使用も許可された。脚本・演出は子供のころから漫画好きだった小柳奈穂子氏に決まった。

 小柳

 テレビシリーズやスペシャル版も見直し、3カ月悩みました。ミステリー作家にお願いしようかとも。でもルパンの新作と考えないで、宝塚の正月公演を作る中で、ルパンが出てくると考えた。宝塚といえば(『ベルサイユのばら』に象徴される)フランス革命。だったら、タイムスリップしてマリー・アントワネットを出そうと思いついた。

 ルパン三世一味がフランス革命の時代に現れる。斬新な発想で方向性が定まった。新トップ娘役咲妃みゆを王妃に配し、ストーリーを固めた。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ルパン三世

 -王妃の首飾りを追え!-」(原作=モンキー・パンチ、脚本・演出=小柳奈穂子)

 ▼兵庫・宝塚大劇場

 来年1月1日~2月2日

 ▼東京宝塚劇場

 

 

 

 

 2月20日~3月22日

 ◆早霧(さぎり)せいな

 9月18日、長崎県生まれ。01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。宙組配属。09年に雪組へ組替え。ストイックな役作りで役柄への集中力は高く、コミカルな演技にも定評がある。今年9月に雪組トップに就き、相手役に咲妃みゆを迎えた。168センチ、血液型AB。愛称「ちぎ」。

 ◆宝塚と作品のシステム

 劇団には専科以外に花、月、雪、星、宙の5組がある。各組70人前後の男役、娘役が所属。頂点にトップスターがおり、相手役はトップ娘役。原則として主演=トップスター。歌やダンス、芝居などトップ個々が持つ長所や魅力が最大限に生かされる演目が選ばれ、オリジナルの場合は個性に沿って脚本が書かれる。「エリザベート」「風と共に去りぬ」などはもとは女性主役だが、宝塚では男役主演ありきで描かれる。

 ◆ルパン三世

 モンキー・パンチ原作。67年8月から69年5月まで「漫画アクション」で連載。71年からテレビアニメ化。シリーズ終了後もスペシャル版、さらに映画と続き、ゲームやパチンコでも展開。原作はハードボイルド色が強いが、アニメのルパン三世はひょうきんなキャラクターでジョークやギャグも多数登場。宝塚版演出の小柳氏は「(原作から)体制へのアンチテーゼ的なメッセージを強く感じた」と話す。