現在放映中のテレビ東京系ドラマ「95」。舞台となるのは1995年の渋谷。

95年といえば1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が起こった。当時高校3年生だったこともあり、物語の登場人物たちと同じく、生死を身近に感じることで人生観がどこか変わった年であった。その95年に渋谷で生きる高校生を描く、面白くなりそうだ。

ドラマは3話が終わったところだが、先に原作となる小説を読んだ。興味深い映像作品があると、職業柄できるだけ原作を読むようにしている。キャストのイメージは合っているのか、いくつかあるテーマの中で順列はどうつけているのか、予算やスケジュールがある上で再現性がどこまでできているのかなど想像の中で答え合わせをしている。そうすることで作品を二度も三度も楽しめる。

そこで今回紹介したいのはドラマに出演している中川大志。主役の高橋海人演じる秋久(Q)を自身のチームに誘う翔を演じている。名門高校に通い、祖父が政治家とスクールカーストの中でも最上位に位置するカリスマ的存在。実は物語もだが、中川演じる翔を見て原作を読みたくなった。そして魅力的な役を演じ切る彼を取り上げたいと思った。

改めて中川大志、子役から活動し大ヒットドラマ「家政婦のミタ」で一家の長男を演じ注目を集める。その後もコンスタントに活躍し、日本アカデミー賞新人俳優賞を獲得するなど若手俳優として人気・実力ともに申し分ない。個人的には、大人になってきた時に先に活躍していた福士蒼汰に似ていることからキャラ被りするなと心配していたが、主役だけでなく脇もできることからドラマに映画にと重宝されてきたイメージがある。

そんな中川が演じる翔が抜群によい。表情や身のこなし、発声まで含めカリスマ的存在という難しい役どころを見事に演じている。ファーストシーンからその雰囲気がビシバシと伝わり、そうそうたるメンバーの中、彼がリーダーだと一目でわかる。とくに注目したいのが歩き方、昭和でも令和でもなくあの時あんなやついたなとどこか思わせる歩き方をしている(笑い)。そう、全体を通して95年に渋谷にいそうな雰囲気たっぷりで見事であると言いたい。

前クールのドラマ「不適切にもほどがある」では86年に、そして今回は95年の渋谷にタイムスリップした気分で作品を存分に楽しみたい。(後付けだが)原作ファンとしては、ラストの“あれ”をぜひとも再現して欲しいものである。彼の活躍と今後の展開に期待です。(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画監督・谷健二の俳優研究所」)


◆谷健二(たに・けんじ)1976年(昭51)、京都府出身。大学でデザインを専攻後、映画の世界を夢見て上京。多数の自主映画に携わる。その後、広告代理店に勤め、約9年間自動車会社のウェブマーケティングを担当。14年に映画「リュウセイ」の監督を機にフリーとなる。映画以外にもCMやドラマ、舞台演出に映画本の出版など多岐にわたって活動中。また、カレー好きが高じて南青山でカレー&バーも経営している。直近では映画「その恋、自販機で買えますか?」「映画 政見放送」が公開。