<フィッシング・ルポ>

 静岡・駿河湾のカツオ&キメジの大フィーバーが止まらない。黒潮に乗って北上するはずのカツオが、大きくなって7キロ超も記録されている。キハダマグロの若魚・キメジも10キロ近い大物が狙える。そこで、田子の浦港から出船し、カツオ釣り歴20年のベテランに密着した。

 ねじりハチマキの吉田章さん(64=厚木市)は、カツオを追い掛けて20年の大ベテランだ。ただ、つい最近の釣行でボウズ(釣果ゼロ)を食らっていた。「釣りたいと思うと空振りする。とにかく今日はまず1匹だね」と謙虚な言葉でスタートした。静岡・田子の浦港「海渡」(市川浩輔船長=32)の右舷ミヨシ(船首)に陣取り、午前4時過ぎに薄暗い海に出ていった。

 午前6時、トリヤマが立った。大きな魚に追われてイワシなどの小魚が海面近くまで浮き上がり、その小魚をカモメなどの海鳥が大挙して捕食する様子が山のようになる-それがトリヤマだ。約20隻の釣り船が周辺を回遊するカツオ、キメジを狙った。タナ(回遊層)は海面から20~30メートル。やや深い。前日に大雨が降り、潮温が約3度下がり23度台、その影響で魚が潜ってしまった。反応がいいときには同10~15メートルでヒットしてしまう。

 吉田さんのサオがいきなり曲がった。「コマセを振ったら、いきなりガツンだ。こりゃ、いいや」と6・5キロを釣り上げた。その直前には左舷ミヨシの川原崎雄二さん(57=富士宮市)にも6キロ級がヒットし、無事にキャッチ。その後、船中で3~5キロのカツオがバタバタと釣れた。前橋市から来た野村勇さん(57)も「4キロ級2匹と小さいのを2匹で計4匹のカツオ。なんとか胸を張って群馬に帰れる」と笑顔をみせた。

 トリヤマなどの分かりやすい目印は、なかなか発見できるものではない。この日も午前10時から約1時間は何の変化もなく、ゆったりとした空気が船中に流れた。涼しい海風をおでこに受けて、吉田さんはミヨシでウトウトして「まあ、洋上でうたたねなんてこんなぜいたくはないね。これが気持ちいいんだ」と約15分ほど夢の世界へ。

 気分転換できたのか、吉田さんが絶好調に。5キロと4キロのカツオを連発して、またまた6キロ級のキメジもキャッチした。「実は、オレのサオね。中古品で2000円なのよ。で、ガイドを新しく買って貼り付けたんだけど、ガイドの方が高いんだ。このサオは新品にないいいしなりなんだ」とサオをなでなでした。吉田さんはカツオ6匹、キメジ2匹で船中トップだった。

 甲府市から訪れた遠藤哲也さん(44)も3キロ級のカツオをゲットし、最後の1投で同行の八島隆一さん(38)も0・8キロのカツオをキャッチして胸をなで下ろしていた。乗船した7人全員が獲物をキャッチできた。市川船長は「カツオはのぼっている最中で、10月ごろには脂の乗った“戻りガツオ”でまた忙しくなる。今の時期で抱卵しているカツオもいる。まだまだ、楽しめそうです」と話すと、大漁でご満悦の吉田さんは「また、もう1度来ないとね」と色気を見せていた。

 ▼吉田さんの仕掛け

 サオは胴調子(6:4)の約2・1メートル(中古品のガイドを取り換えた自作改造品)。リールは中型両軸受(釣り味を楽しむため手巻きだが、電動でもOK)。道糸新素材12号。片天ビンにコマセカゴ(100号)。ハリスは20号(2メートル)。ハリはヒラマサ14号。6キロ級のキメジ3匹をキャッチした同乗者は「ハリが大きいと口バレするのでヒラマサ10号までサイズダウン」。エサはオキアミの抱き合わせ。

 ▼宿

 日刊スポーツ新聞社指定「海渡」【電話】0545・60・0708。カツオ&キメジ乗合は午前4時集合、同4時半に出船。エサと氷付きで1万4000円。他船も好釣出漁中。