<フィッシング・ルポ>

 駿河湾にヤリイカが入ってきた。強い西風に悩まされて、出船できる機会は決して多くはないが、昼夜問わず反応は良好だ。すでに100匹を超える釣果も出ていて、完全にスイッチが入った状態だ。特に夜釣りはヤリイカが接岸してきて、水深20~30メートルの浅場で手軽に楽しめる。西伊豆・戸田「たか丸」(野田孝船長)でトライした。

 この駿河湾のヤリイカの波は本物かもしれない。

 今月9日夜、戸田「たか丸」で73匹(最大51センチ)。

 10日、焼津小川港「幸進丸」で40匹(同52センチ)。同日夜、戸田で57匹(同56センチ)。13日夜、久料「魚磯丸」で115匹(同48センチ)。

 その後も好乗り情報が相次いでいる。イカは海中でキラキラ輝くプラスチックの棒(プラヅノ)に抱きついてくる。ハリは開いた剣山のような「カンナ」で、返しはない。口がハリに掛かるわけではなく、乗っかってくる状態なので、魚で「食う」状態を「乗る」と表現する。

 今回、取材で乗船したのは、たか丸。この時期、夜釣りのヤリイカでは、定評の高い船宿だ。昼夜問わず出船するが、ここは何といっても夜がいい。

 日中の釣りでは、ヤリイカも恥ずかしがり屋なのか、水深150メートル前後のポイントでしか乗ってこない。それが日が暮れて、船上でライトを照らすと、水深20~30メートルの底から海面近くまで、自由自在に乗ってくる。

 さて、ヤリイカの乗せ方だ。深さのある昼間ではオモリは120号だが、夜は潮の流れで60号か80号の軽さでよい。この日は途中から流れが速くなったので、野田船長からは「オモリは80号にするずら」と指示された。水深は24メートル。プラヅノは6本。着底してから大きくサオをあおる。サオ先を勢いよく下げて、プラヅノがフワリと落下していくようにする。

 この落下時にヤリイカが光るツノを認識して追いかけると思われる。動きが止まった直後にグンッ、と「乗って」くる。このアクションを繰り返すが、乗ってくるタナ(泳層)はその日によって違うので、底付近だけではなく、広く探ることも重要だろう。

 ただし、方法は1つではないので、あくまで、この日、最も効果的だったものを紹介する。ほかの魚種も方法論は1つではない。釣り人それぞれのアプローチがあるので、読者のみなさんも独自に研究すると、釣りがもっと楽しくなるかもしれませんよ。【寺沢卓】

 ▼宿

 戸田「たか丸」【電話】0558・94・3214。ヤリイカの乗り合いは、夜釣りなら午後4時と同10時30分集合で氷付きで8000円、両便通しならば1万4000円。昼間の釣りは、午前6時、午後0時30分集合で同じく8000円。