昨年12月22日の新潟県糸魚川市の大規模火災で焼けた学習塾が明日11日、新校舎で通常授業を再開する。小中高生23人が通う学習塾「秋山塾糸魚川校」の秋山泰宏さん(27)は「20年後、30年後の糸魚川を造っていく子どもたちのため、教育で地元を盛り上げるのが自分の役割。その役割を果たす」と話している。

 受験シーズンまっただ中の火災だった。塾は火元の飲食店から北東に約100メートル離れた店舗兼住宅にあり、「最初は危機感がなかった」という。安全のため、当日は休講にしたが、秋山さんは出火から10時間ほど経過した時も講師らと年賀状を書いていた。「後ろまで火が来てるぞ」。消防団員の叫び声を聞いて外に出ると、すぐに火が移った。2階は焼け落ち、1階の教室は水浸しとなった。

 糸魚川出身で、教員の父を持つ秋山さんは新潟大卒業後、大手学習塾で研究を重ねて12年6月に地元で塾を開校。「糸魚川の子どもが夢を実現するため、あらゆる進路を選択できるような圧倒的な学力を付ける」。そう志して糸魚川駅の隣の青海駅近くにある実家倉庫で「鉛筆一本あれば勉強はできる」と塾を開いた。最初は7人だった塾生も5年で100人を超えた。糸魚川駅近くにも開校してほしいとの要望を受け、昨年9月に2校目の糸魚川校を新設したばかりだった。

 糸魚川校の23人中、受験生は小中学生10人。「受験までの予定を1時間でも遅れさせない」。そんな思いで、糸魚川校近くの空き事務所を急いで確保した。12月30日から1月2日までは朝9時から夜10時までの冬期講習も行い、勉強への影響は最小限に抑えた。

 「変わり果てた町を見た子どもの心への影響は正直分かりません。でも、学びを止めてはいけない。子どもたちと、今できることをやっていきたい」。秋山さんは新校舎で思いを新たにしている。【清水優】