20日、第45代大統領に就任した共和党のドナルド・トランプ新大統領(70)が、首都ワシントンの連邦議会議事堂前で就任演説を行った。

 就任演説は、具体的に政策を語る場ではなく、理念や哲学、歴史的な意義など大局的な見地で語るのが通例だった。トランプ氏に、大局を語る意思はなかった。演説に重みはなく、ボクシングに例えれば「ライト級」。全ての米国人に訴えたように見えるが、自身の支持者へのメッセージという意味合いが強かった。

 演説の3分の1は、今の米国が暗いことを強調しており「この窮地を私が逆転させる」という論理構成。終盤でデトロイトとネブラスカの地名を出したのは、自分を支持してくれた白人労働者階級が多い地域だから。民主党支持者が多い都市部への不満を込めた。

 「We will make America great again」の決めぜりふのように一文が短い。2つか3つの文章をつなげることは少なく、英語を話す人なら誰でも分かる表現。トランプ氏は以前「オバマ大統領は言葉が難しい」と批判していたが、自分は分かりやすく話せることを示したかったのでは。

 イスラム過激主義者のテロ行為について「地上から完全に消し去る」と明言。イスラム国などへの宣戦布告で、就任演説としては珍しい内容だった。「口先だけで行動しない政治家を、これからは受け入れない」とも話したが、製造業再生や雇用拡大などの公約を果たせなければ、自身も「口先だけ」と批判されることになる。(国際ジャーナリスト)

 ◆小西克哉(こにし・かつや)1954年(昭29)4月29日、大阪市生まれ。東京外国語大学大学院地域研究科修士課程修了。テレビ朝日系「CNNデイブレイク」などでキャスターを務め、国際ジャーナリストとして活動。国際教養大学大学院客員教授。