便利になったものだ。ネット上で3万円も出すと、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞などの疾患の遺伝子診断を受けることができる。アルコール依存症、ニコチン依存症になりやすいかどうかもわかる。でも全部可能性の話。パーセンテージの話なのだ。多くの病気は遺伝子だけでは決まらない。環境の因子が大きいのだ。

 2月に「検査なんか嫌いだ」(集英社)を出版した。ここに詳しく書いた。読者プレゼントもしましたので、注意して読んで下さい。

・遺伝よりも「どう生きるか」が大事

 糖尿病も調べてくれる。便利なようだが、ぼくは役に立たないと思っている。糖尿病は遺伝と関係すると言われている。ぼくの実の父は糖尿病で透析を受け、最後は脳卒中で亡くなったと、風のうわさで聞いた。子どもの頃捨てられた後、会っていない。

 ぼくは当然糖尿病にかかりやすい可能性があると思っているが、遺伝子検査なんかするつもりはない。かかりやすいとわかっているので、ちょっと食べ過ぎたと思ったときは、数日間、軽い炭水化物断ちをする。この10年間、BMI27の「ちょい太」を維持している。糖尿病にもなっていない。

・まず簡単な目標を立てろ

 英国ケンブリッジ大学の研究で、糖尿病の遺伝子異常があるとわかっても、生活習慣の改善には役に立たないことがわかった。どうしたら意識を変えることができるのだろう。

 1%でいいから生活習慣を変えてみることだ。例えば「野菜を多く食べる」と目標を立てる。後は気にしない。焼き肉でも焼き鳥でも、お酒も飲みたいだけ飲んでいい。これだと結構やれる。目標を達成すると、快感ホルモンのドーパミンがでる。小さな達成がクセになるのだ。次に1キロ痩せる目標を立てる。次々にやっていく。こうして長野は日本一長寿になった。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。