・自己チェックしよう

 認知症の患者が今460万人、予備軍が400万人いるといわれている。

 予備軍ともいわれている軽度認知症(MCI)を早期に見つけて運動療法などの治療を始めると、30~40%の人は健康な同世代の人と変わりない認知機能を取り戻すことができる。

 ぼくは「検査なんか嫌いだ」(集英社)という本を書いた。検査は嫌いだけど、上手に利用するようにしている。その中の1つにMCI発見のためのセルフチェックがある。3つ以上該当するとMCIの可能性があるといわれている。(1)何度も同じ話をする(2)水道の水が出しっぱなし(3)同じ商品を買っていた(4)「あれ」「これ」で話す(5)外出が減った(6)服装などに無頓着(7)趣味が楽しめない(8)家電操作にまごつく(9)会計時に小銭を使わなくなった(10)日付が出てこない。

・散歩は認知症予防になる

 MCIは日常生活に支障がないため、見逃しやすい病態だ。ぼくは68歳。自分でもセルフチェックをしてみた。皆さんもぜひ。

 水の出しっぱなしがたまにある。イラクの難民キャンプに行くときは必ず詩集を持っていくのだが、あまり有名でない詩人の同じ詩集を3回も買ってしまった。歌手の名前が出てこないことがある。小銭はあまり使わなくなった。4つもあるのだ。「あれ、あれ」はおっさん病の代表的な症状だ。

 MCI予防のためにも、本をたくさん読み、家に閉じこもらないようにしている。若者と「地域包括ケア研究所」というのを作り、よく議論している。1日20分間、週4回散歩をするだけでも、40%認知症の発症が減るというデータもある。時間があると、スキーに行く。ノンストップで3キロを3本滑る。閉じこもらず、外へ出ていくことがおっさん病予防には大事だ。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続けてきた。文化放送「日曜日はがんばらない」(毎週日曜午前10時)出演。