LAに住んでいるとフェラーリやランボルギーニなど超高級車を見ることがよくありますが、最近はお金持ちが住むビバリーヒルズなどのエリアを走っている車が、ポルシェやベンツからテスラに代わってきています。

 無名のベンチャー企業が2008年から量産を始めた電気自動車「テスラ ロードスター」(現在は生産終了)は、バッテリーとモーターだけで走る“完全無欠”の電気自動車(EV)。これまで、EVは一般消費者には値段が高すぎて手が届かず、またメーカーにしても儲けが出ないと評判は今ひとつでしたが、それを覆したのがテスラ・モーターズでした。

 カリフォルニア州シリコンバレーに本拠地を置くテスラは、世界中で使われている決算サービス「ペイパル」の共同創設者イーロン・マスク氏が2003年に立ち上げたベンチャー。マスク氏はあのアップル創設者のスティーブ・ジョブズ氏を超える男と言われ、映画「アイアンマン」でロバート・ダウニー・Jrが演じた天才発明家トニー・スタークのモデルになった人物としても知られています。

 ロードスターはノートパソコンと同じバッテリーで、フェラーリより早く走り、ポルシェより安い高級スポーツカー。さらに1回の充電で最大約500キロの走行が可能で、時速60マイル、96.54キロ)までの加速時間は3・9秒。燃費もトヨタのプリウスの約2倍で、370キロ走っても電気代は500円程度というまさに夢のようなEVです。

 ロードスターは、9万8000ドルの値段にも関わらず販売開始3週間で完売。生産終了後もセダンやクロスオーバータイプなど、多彩なモデルを発表し、昨年頃からテスラ車がバカ売れしていると話題になっており、エコに敏感なハリウッドスターたちもハイブリッド車からテスラに乗り換えています。レオナルド・ディカプリオ、キャメロン・ディアス、モーガン・フリーマン、ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ブラッド・ピット…と今やテスラを所有するスターはたくさんいます。

 その要因は、販売戦略と充電ステーションの独自展開にもあります。ロサンゼルスでは郊外に大型の販売店を構え、市内でも広い敷地に車を展示する大きなショールームを持つカーディーラーがほとんどですが、なんとテレサは歩行者天国になっているファッションブランドが軒を連ねるサンタモニカのショッピング街「サードストリート・プロムナード」に小さな店舗を構えています。

 また、ショッピングモールの駐車場にテスラ専用の駐車スペースを設置し、買い物中に無料でバッテリーチャージができるなど、全米各地に充電施設を作り、将来的にはアメリカ横断も可能になると言われています。

 すさまじい勢いでEV界を牽引しているテスラですが、それ以上に注目されているのが、マスク氏が次々と発表する新事業。EVの次はロサンゼルスとニューヨーク間をわずか45分で移動させる(現在は飛行機で約5時間)夢のようなリニアモーターカー構想や、2030年までに火星に人類を移住させて小さな都市を作る構想なども掲げており、EVのさらなる発展とともにこちらの事業の実現にも期待が高まっています。(ロサンゼルスから千歳香奈子。写真も)

オシャレなブティックが建ち並ぶ中、テスラの店舗は買い物ついでに女性でも入りやすい雰囲気になっています
オシャレなブティックが建ち並ぶ中、テスラの店舗は買い物ついでに女性でも入りやすい雰囲気になっています
オーガニック系スーパーの駐車場でも最近はEV専用駐車スペースがお目見えしており、無料で充電ができます
オーガニック系スーパーの駐車場でも最近はEV専用駐車スペースがお目見えしており、無料で充電ができます
わずか30分の充電で280キロの走行が可能なテスラのスーパーチャージャーは全米各地に設置されています
わずか30分の充電で280キロの走行が可能なテスラのスーパーチャージャーは全米各地に設置されています