サマータイムが終わると夕暮れが一気に早まり、寂しい気分になります
サマータイムが終わると夕暮れが一気に早まり、寂しい気分になります

実は省エネのためなんです

 アメリカに暮らしていると年に2回、時間が1時間減ったり増えたりする日があります。ここには日本でも導入が議論されたことのある「サマータイム制度」があるため、決められた日になると時計の針を進めたり戻したりしなければいけないんです。サマータイムは、英語ではデイライト・セービングと言います。その名の通り、デイライトつまり昼間の時間帯を有効活用して省エネしましょうってことです。夜明けが早い夏の時間帯を早めることで必然的に消灯時間も早まるので、エネルギー消費を抑えことを目的に導入されたと言われています。日本でもアメリカ連合軍の占領下にあった1948年から51年までの4年間導入されていたそうですが、不評のために廃止されたそうです。

ハワイなど3州は導入されていません

 サマータイムと言っても、実のところは春から秋にかけて半年以上に渡る長期間が対象。かつては4月から10月まででしたが、2007年に期間が延長されて今では毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までと決まっています。そのため、今年は11月6日から通常の時間帯に戻る、いわゆる冬時間に変わりました。全米すべての州にサマータイムがあると思っている人も多いかもしれませんが、実はハワイ、アリゾナ、インディアナの3州にはありません。開始と終了日は連邦政府が決めることが1966年に制定された法律で定められていますが、導入するかいなかは各州の判断に任されていたため、農業が盛んなインディアナ州や日中のエネルギー消費量が高いアリゾナやハワイではメリットがほとんどないことを理由に導入しなかったと言われています。

夜長の季節を迎えたこの季節、家に帰る時間も自然と早まるようです
夜長の季節を迎えたこの季節、家に帰る時間も自然と早まるようです

午前2時に変わります

 ところで、サマータイムは何時に時間が変わるか知っていますか? 午前0時になった瞬間と思われる方も多いと思いますが、正解は午前2時です。すなわち、夏時間の時は午前1時59分59秒の次が午前3時00分となり、1時間時計が早く進みます。逆に通常の時間に戻る時は、時間が巻き戻って再び午前1時00分になるのです。携帯電話の時計などGPSを用いた電波時計は自動的に時間が切り替わりますが、多くの家庭では時間に関係なく、夜寝る前に時計を1時間進めたり遅らせたりしてから就寝するのが習慣のようです。テレビのニュースなどでも、「デイライト・セービングが終わります」と繰り返しアナウンスされるのでうっかり忘れることもないでしょうが、学校に行ったら教室にまだ誰も来ていなかったなんて失敗談を持っている人は結構いるようです。サマータイムが終わる日は午前1時から2時までの1時間が2回あることになりますが、もしもこの間に大きなニュースが起きた時はどうなると思いますか? この時間帯に起きた出来事を伝える際は、スタンダード・タイム(ST)とデイライト・タイム(DT)を時間につけることで区別するんです。

州をまたがる移動には要注意

 たった1時間ですが、実はこれが結構時差ボケになります。サマータイムが終わった直後は朝1時間早く目が覚めてしまいますし、暗らくなるのが早まるので夜は早くに眠くなります。体が慣れるまでの数日間は、なんだか1日がとっても長く感じられます。また、サマータイムでもうひとつやっかいなことは、州をまたがっての移動。例えばカリフォルニア州からアリゾナ州にサマータイム期に旅行する際には、時計の針を進めたり遅らせたりしなければいけません。さらに面倒なのは、アリゾナ州とユタ州にまたがるナバホ・インディアン保護区では独自にサマータイム制度を導入しているため、同じ州内でありながらもこの保護区内にある観光名所モニュメントバレーを訪れる際だけは、時間が1時間早まるんです。こうしたことを覚えておかないと、飛行機の時間を間違えて乗り遅れたなんてことになりかねないんです。

夜が長く感じられるこの季節、どことなく町も静かに感じられます
夜が長く感じられるこの季節、どことなく町も静かに感じられます

終わると一気に夜が長く感じます

 日本とは文化も風習も違うので、なかなか一概に良し悪しは言えないことでしょうが、アメリカではエネルギーの節約のみならず、余暇を充実させ、その結果として経済の活性化にもつながるとも言われています。LAでは最長で夜8時半頃まで明るいので、仕事終わりに遊びに出かけることができ、暗くなるまでの数時間を楽しむことができます。だからサマータイムが終わると一気に夜が長く感じられ、なんとも寂しい気分になるものです。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。写真も)