ロサンゼルス(LA)にはベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の人がたくさん暮らしており、スーパーマーケットにもベジタリアンやビーガン向けの総菜や食材がたくさん売られています。そんなLAで近年注目を集めているのが、まるで本物の肉のような「植物肉」。その名の通り、牛肉でも豚肉でも鶏肉でもなく、植物性タンパク質のみで作られた代替肉です。

調理済みのベジバーガーなど、LAのスーパーマーケットには多くの植物性タンパク質で作られた製品が並んでいます
調理済みのベジバーガーなど、LAのスーパーマーケットには多くの植物性タンパク質で作られた製品が並んでいます

 中でも人気を集めているのが、見た目がどう見ても牛肉のパテにしか見えない「ビヨンド・バーガー」です。2009年に創業したLAのベンチャー企業ビヨンド・ミートが開発したもので、創業者のイーサン・ブラウン氏が、「本物の肉と区別できない製品を作り出す」と明言した通り、試行錯誤を繰り返して作られたパック入りのパテは普通の牛肉のパテと見分けがつきません。食べ方も通常のパテを焼くのとまったく同じで、フライパンで両面を3分ずつ焼き、良い感じに焼き色がついたものをバンズに挟んでハンバーガーとして食べることができます。気になるお味はというと、おそらく何も知らずに食べたなら、これが植物性タンパク質だけで作った代替肉であるとは気づかないほど普通においしいと思います。以前からベジタリアン向けの野菜や大豆を使ったベジバーガーはありましたが、ビヨンド・バーガーはそれらと比べて野菜の独特な味がしないのが特徴です。原材料は、主にえんどう豆から抽出したプロテインと圧搾キャノーラオイル、精製ココナッツオイル、イーストです。見た目も味も普通の肉と変わらないので、肉好きな人でも抵抗なく食べられます。

こうしてみると普通の牛肉のパテにしか見えないビヨンド・バーガー
こうしてみると普通の牛肉のパテにしか見えないビヨンド・バーガー

 もうひとつの特徴は、単なるビーガン向けのヘルシーな商品開発にはとどまらず、環境問題に大きく貢献すると期待されていることです。米国では動物愛護の観点などから肉を食べないと言う人が増えていますが、世界の食肉消費は増え続けており、いずれ家畜の生産がそのスピードに追い付かなくなると言われています。また、食用の家畜の飼育が地球温暖化を加速させる温室効果ガスの発生に影響しているとの報告もあり、近い将来いずれは本物の肉が食べられなくなる時代が来るかもしれないのです。それらの理由から、肉に代わる食品の開発が米国では注目されており、ビヨンド・ミートにはあのビル・ゲイツやツイッターの共同創業者ビズ・ストーン氏の他、俳優レオナルド・ディカプリオも出資しています。

パテ2枚が入って通常は5・99ドルですが、セールで安売りしていることもあります
パテ2枚が入って通常は5・99ドルですが、セールで安売りしていることもあります

 ビヨンド・バーガー以外にも調理済のチキンにそっくりなビヨンド・チキン、ミートボールにしか見えないビヨンド・ビーフなども販売されていますが、これらはちょっとパサパサした感じがすると言う消費者も多くいますが、フレッシュなビヨンド・バーガーは焼き立てのジューシー感がより肉っぽさを感じさせると評判です。ニューヨーク・タイムズ紙が「肉を超えた肉」と評したこともあるビヨンド・バーガーは、現在はLAやニューヨークなど都会を中心に販売されていますが、2020年までには50億ドルの世界市場規模になると言われています。近い将来、本物の肉に代わって代替肉がスタンダードになる時代が本当に来るのかもしれません。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。日刊スポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)