天然のタコが食べたい! そんな願いをかなえるべく向かったのは千葉の内房・富津「みや川丸」。富津岬を眺めながら、身の引き締まったプリプリのタコを狙った。この日は風の向きと潮の流れが逆というあいにくのコンディション。それでも乗船客らは次々と釣り上げ、私も念願の富津のマダコをゲットした。その模様をリポートします。

 天気は快晴。風もなく波も穏やか。初めて踏み入れた富津の地で、心を躍らせていた。この日は魚ではなく、人生初のタコを狙う。富津のタコは身が締まっていて甘みがあることで知られる。この日の乗船客もほとんどが、その「ブランド」を求めて足を運んでいた。

 仕掛けは、えさのイシガニをくくり付けたテンヤに渋糸をつけて落とすだけ。道具はレンタルもあり、出船前に宮川淳船長(56)が丁寧にタコ釣りをレクチャーしてくれるので初心者でも安心だ。

 釣り方は、海底までテンヤを落とし、オモリを少し持ち上げて、底をコツコツと小刻みに小突く。ひたすらこれを繰り返してタコをおびき寄せる。まずはオモリの重さをしっかりと体に覚えさせることが大事。タコが仕掛けに乗ってきた時の重みと区別できるようにするのだ。だが、私のような初心者には、この感覚が難しい。当たっているのか当たっていないのか。最初はかなり悩まされた。

 「ググッ」。急にズシッとくる重みに渋糸をもっていかれそうになった。「なんだ、これは。大物か?」。しばらく格闘していると、船長が「根掛かりだよ」…。常に仕掛けを底につける釣りのため、根掛かりが多いという。慌てずに、渋糸を引っ張ったり、緩めたりを繰り返してみることが重要だ。

 そんな中、周りを見れば次々と大きなタコをゲットしている。1キロ超の立派なタコを釣り上げた釣り歴50年の上原光秋さん(65=埼玉・草加市)は「マダコ釣りは仕掛けに悩まないし、富津のタコは味もいい。ここのタコを食べたら、他のタコは食えないよ」と笑顔をみせた。タコは刺し身、唐揚げ、タコめしなど調理法もさまざまだ。

 友人4人と乗船した西村静芳さん(59=東京・北区)は紅一点。初めてのタコ釣りで、見事なマダコをゲットした。「感覚をつかむのが難しかったけど、船長の言う通りにしたら釣れました。石焼きにして食べたい」と、うれしそうだった。

 遅ればせながら、私も300グラムほどの小さなマダコを1匹ゲットした。何かが仕掛けに乗ったような感触があり、勢いよく引き上げるとタコがいた。釣り上げる時の何とも言えない重さと感覚。これはやみつきになりそうだ。

 宮川船長によると、今の時期は今年生まれたばかりの小型のマダコも多いが、1カ月もすれば大きくなるため、これからの時期が狙い目だという。

 自分で釣り上げた小ぶりなタコを早速食べてみると、そのプリプリの食感と甘さは格別。船長によると、大きいものほど味もよいといい、再度の挑戦を胸に誓った。富津のマダコ、おすすめですよ!【松尾幸之介】

 ▼船 富津「みや川丸」【電話】0439・87・4137。午前5時に富津港で受け付け後、出船、午後0時半ごろ沖上がり。料金は男性9000円、女性と中学生までの男女は6000円。貸しタコテンヤ、持ち帰り用ネット、氷付き。カサゴ釣りもやっており受付時間、料金ともに同じ。エサ、氷付き。