魚料理にピッタリのお酒で、おいしく食事をしたい-。そこで、東京・築地の日本酒専門店「築地 熊ごろう」の「熊さん」こと佐藤敦聡店主(49)に静岡・久料「魚磯丸」でサオを握ってもらった。日中の根魚五目と夜狙うアジ釣りで大量の高級魚をゲット。さてさて、どんな料理と日本酒が飛び出すのか…。

 以前から熊さんには「釣った魚で料理をしてみたい」とのオファーを受けていた。ならば、豊富な魚種を誇る西伊豆・久料「魚磯丸」に連れて行っちゃえ!

 築地本願寺から徒歩1分の場所にカウンターだけのお店。日本酒にこだわり、店内は24時間空調を効かせて、どんな猛暑でもいつもひんやりしている。主役は日本酒なのだ。

 熊さん 釣った魚は、間違いなくうまい。日本酒にあう料理の研究にもつながる。どうせなら自分で釣った魚で勝負したい。

 定休日は土・日・月曜なので、金曜の片付けが終わる午後11時30分に熊さんを車に乗せて、久料にすっ飛んだ。まずは根魚五目だ。

 エサはサビキ6本バリ仕掛けでカタクチイワシを釣る。足元のイケスに生かしたままにして、そのイワシをエサにして根魚を狙うのだ。久保田清船長が魚探(魚群探知機)で探ってイワシの群れを見つける。海面から5~20メートルで爆釣だ。簡単にエサを確保できる。この海は本当に魚が濃い。

 熊さん いやぁ~、ほとんど釣り経験がないんですが、ここの海は初心者に優しい。カサゴ、サバがじゃんじゃん釣れる。私は釣れなかったけど、ハタ類も赤、青、黄色…まるで信号のランプ。にぎやかで、この釣りは大好きかも。

 寝ないで移動してきたため、午後便は回避して、長岡温泉で湯につかって、短いながら昼寝をして体調を整えた。いざ、夜のアジと対決だ。

 夕景に富士山が映える。西伊豆の星空になるまでの天体パノラマショーも楽しめてしまう。

 熊さん 夜風も涼やか。暑い中、釣るのも夏らしくていいけど、この夜釣りの気持ちよさはクセになりますねぇ…おお、アジが釣れた、デカぁ~い!

 待望のアジ。それに船上ではライトをたいていることもあって、海面からトビウオが勝手に船内に勝手に入ってくる。

 熊さん なんじゃこりゃー、って感じです。夜釣りも楽しい。根魚五目と温泉と夜釣り、完璧な黄金比率が成立している。遊びの王道ですね。料理の創作意欲が湧き上がってきます。

 築地に戻って、取材用にいただいた魚も含めて、13種の魚がそろった。

 熊さん 意外に思う方もいるかもしれませんがサバを使います。仕掛けをグルグル巻きにしちゃうから嫌われ者ですが、このサバは料理に使わない手はない。それとまっ赤なアカハタ。2品つくりましょう。

 サバはふんわりと天ぷらにした。築地のおいしいパン店「折峰」でバゲット(フランスパン)を購入。「サバサンド」だ。ガリ(ショウガの酢漬け)とスライスした玉ネギを挟む。味付けは「三升(さんしょう)漬け」をマヨネーズであえる。

 熊さん 私、北海道出身で、しょうゆ、麹(こうじ)、青トウガラシをすべて同量で漬け込むのが三升漬け。マヨネーズを加えると洋風になる。日本酒は奈良県の「篠峯(しのみね)」純米吟醸の夏色生酒。やや炭酸がきいていて、濃くてうまいサバの脂を吸収してくれる。バッチリです。

 そして、タコボウズ記者の釣った高級魚アカハタは大胆にもフライにしてタルタルソースをぶっ掛けて、ちょろんとしょうゆ。フワフワの白身がたまらーん。

 熊さん 日本酒は山口県の「雁木(がんぎ)」純米無濾過(むろか)生原酒です。アカハタもタルタルも甘い食味なので、スッキリした辛口で。合うなぁ。

 夏こそ、釣った魚と口当たり、のどごしのいい日本酒とマッチングさせてみましょうか。【寺沢卓】

 ▼築地「熊ごろう」 【電話】03・6278・8530。東京都中央区築地2の14の2、地下1階。カウンター10席。営業は火~金曜で、午後6時~同11時。日本酒と手打ちそばが自慢で、日本酒はその季節に合わせて20種前後をキープしている。

 ▼宿 久料「魚磯丸」【電話】055・942・3230。根魚五目の乗船料は氷付きで1万円、夜アジは1万500円。1日で2便通し(午後便も含む)は1000円引き。