日本ハムの育成契約で、昨年のU18台湾代表エース・孫易磊(スン・イーレイ)投手(19=中国文化大)の登板を見る機会に恵まれた。いずれはメジャー挑戦も夢見る大器は、6回から登板し、1イニングを1安打2奪三振1四球での無失点と、まずまずの内容だった。

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最速153キロは迫力十分だった。私がストレートを見る時には必ずチェックする空振りの奪える球質だった。回転数も十分で、打者の手元で伸びていた。

投手に転向してまだ2年ほどと聞いた。これからもっと良くなるだろう。チェンジアップとフォークを投げると聞いたが、私が見た位置からでは見分けが付かなかった。

恐らく、135キロほどの変化球がチェンジアップだと思う。もう少し抜いたチェンジアップを投げられるようになれば、真っすぐとの球速差がつき、打者にとってはタイミングが取りづらくなると感じる。

昨年のU18W杯で登板しており、当時から抜きんでた印象を受けていた。持っている可能性からすると、この日のピッチングは予想された内容だった。真っすぐの球質は良く、マウンド度胸も感じられた。

ご家族も観戦に訪れていたということだったが、初球はかなり力んでいた。左打者の腰のあたりにあわや死球というほど、思い切りひっかけていた。ちょっとマウンド上で表情がこわばったように見えたが、2球目にチェンジアップを投げて落ち着きを取り戻すところは、メンタルの強さを感じさせた。

まだ19歳と若く、体も細い。これから大きくなっていくはずだ。それとともに球威も上がるだろう。ますますボールの強さは出てくるだろうし、スタミナがつけば先発としてどんなピッチングを見せてくれるか非常に楽しみだ。

同じ台湾出身で言えば中日で活躍したチェンのように日本で成長し、メジャーでも活躍できる投手になる可能性を感じる。右と左の違いはあるが、表情を見ていると、中日時代にめきめきと頭角を現したチェンをほうふつとさせた。

また、右腕としては、1軍に出だしたころの西武渡辺久信か。細いが、キレのある真っすぐをガンガン投げ込んでくる強気のピッチングだった。孫にもそうした見ているファンをワクワクさせるピッチングを期待したい。

1死からヒットを許した後、変化球を続けて四球を与えたところなどは課題だろう。捕手のサイン通りに投げた可能性はあるだろうが、今はまず真っすぐをさらに投げて磨いてほしい。

分かっていても打てない真っすぐほど、打者にとって怖いボールはない。そういうボールは限られた投手にしか投げられない特別なボールだ。私の目には、育成であるが、短いイニングならばすでに1軍でも登板可能ではないかと感じるくらい、キレと強さを感じた。(日刊スポーツ評論家)