伝統のピンストライプで両雄が並び立つ-。日米20年の現役生活にピリオドを打った松井秀喜外野手(38=前レイズ)に、古巣ヤンキースが「引退試合」の舞台を検討していることが、28日(日本時間29日)分かった。キャンプ地のフロリダ州タンパで開催する来春のオープン戦が有力で、1日限定で背番号「55」も復活する可能性が出てきた。実現すればイチロー外野手(39)と初のピンストライプ共演となりそうだ。

 松井がヤンキースのユニホームで有終の美を飾る?

 メジャーデビューを刻み7年間過ごした古巣が、功労者のために粋な演出の準備に入った。松井と1日限定の契約を結ぶ「ワンデー・コントラクト」という制度で、日本流にいえば「引退試合」。ファンに祝福されながら、最終所属をヤ軍で終えるプランだ。

 ヤンキースは松井との「再契約」に異存はない。引退発表した前日27日(同28日)には、松井がメジャーで所属した4球団で唯一、公式コメントを発表した。しかも主将ジーター、スタインブレナー・オーナー、キャッシュマンGMが連名で引退を惜しむ言葉を寄せた。地元ニューヨークにおける松井の影響力はそれだけ大きく、偉大なOBとして認められた証拠だった。

 「ワンデー・コントラクト」の歴史はまだ浅く、契約を結んでも始球式で終える例が大半を占め、実際にプレーするケースはまれだ。ただ松井は、引退会見で「引退という言葉は使いたくない。まだ草野球をやる予定もありますし、まだまだプレーしたいです」と話したように、体はある程度動ける状態にある。「ワンデー-」は公式戦でも可能だが、選手登録の関係で試合出場は難しい。一方、オープン戦ならマイナー契約でプレーが許されている。松井の希望次第では、守備に就くことも可能だ。

 順調なら来年2月にも再びピンストライプの勇姿が見られそうで、「55」は今季付けたマーティン(パイレーツ)がFA移籍し、松井が背負うことに支障はない。イチロー、同学年の黒田とはチームメートになる。イチローとは過去、日米野球や米オールスターで同じチームになったことはあるが、2度のWBCは不出場のため、試合で同じユニホームを着たことはない。日本シリーズ、メジャーでも同じア・リーグの宿敵として火花を散らした「イチマツ」コンビだが、実現なら1日だけ貴重なツーショットに納まることになる。

 ◆松井とイチローの共演

 プロ入り後、最初の対戦となったのが93年3月16日のオープン戦。当時2年目のイチローは、本名の鈴木でオリックスの9番中堅、新人だった松井は巨人の7番左翼で先発出場した。オープン戦以外では、96年の日本シリーズ、94~00年のオールスターで対戦している。メジャーでの対戦は通算91試合。最初は03年4月29日のヤンキース-マリナーズ戦で、今年7月22日のレイズ-マリナーズ戦が最後。この試合ではイチローが2番右翼でフル出場、松井は9回2死から代打で出場して遊飛。これが松井のメジャー最終打席となった。

 ほとんどが敵と味方に分かれての対戦だったが、96、98年の日米野球では同じ全日本のメンバーとして戦っている。96年は4試合、98年は7試合にそろって出場。96年11月10日には3番中堅イチロー、4番右翼松井と初めて2人の名前がスコアボードに並んだ。98年は3番イチロー、4番松井が4試合あり、11月15日第7戦の3回には2人が連続適時安打を放っている。メジャーのオールスターでは03、04年に同じア・リーグの選手で出場。03年はイチローが1番右翼、松井が7番中堅で先発した。