日刊スポーツ入社3年目の松尾幸之介です。今回は日刊釣り面でもおなじみの哀川翔さんと共に、静岡・熱海伊豆山港「第十喜久丸」(松本早人船長)に乗り込み、アマダイ釣り対決を行いました。あいにくの雨の中、最後まで結果の読めない壮絶な戦いとなりました。

 釣り担当に任命されたのは、まだ新人だった一昨年の10月。初めは道具の準備からサオさばきまで、何もかもがボロボロだった。多くの船宿を訪れ、船長さんらの指導を受けるうちに次第に手返しも早くなり、アタリの感覚もつかめるようになってきた。節目の担当2周年となる今回、満を持して勝負を挑んだ。哀川に「今回のアマダイ釣りは、僕と翔さんの対決です。多く釣った方が勝ちです。空気は読まずにやらせてもらいますよ」と宣戦布告した。

 哀川 え? オレと勝負するの? (笑みを浮かべながら)いいじゃねえか。かかってこいよ。

 船の右舷に隣同士で並んで出船。この日は数日前に通過した台風の影響もあり、海に濁りのあるバッドコンディション。加えて、出船してすぐに雨も降ってきた。風が強く、うねりもある。そんな中で幸先よくアマダイをゲットしたのは哀川だった。

 哀川 きたきた! アマダイ。どうだ、これだよ、これ。いい形だね。引きも強かったよ。

 勝負がかかると神がかり的な力とアタリを発揮する「哀川マジック」は健在だ。「僕が先に釣りますからね」と告げた矢先に釣られてしまい、面食らった。生半可な気持ちではダメだ。少しサオを置き、同乗した周囲の釣り人に当たっているタナを取材。底から1~2メートルをキープしつつ、水深が変わるため、小まめにタナを取り直すことをアドバイスされた。

 オモリを底に落とし、2メートル上げた。すぐにサオが揺れた。何かがエサをつついている。少し合わせて様子をみると「ブルルンッ」。サオがしなった。間違いない。アマダイだ。それまで釣れていた外道とは少し違うアタリに、確信が持てた。自信を持ってリールを巻くと、約30センチの立派なアマダイ。これで追いついた。何となく感覚を覚えた気もした。ここから一気にリードしていきたい。テンションが上がってきた。

 雨は降り続き、それからしばらくはアタリが止まった。残り2時間を切っていた。イトヨリ、キダイ、サバ、カサゴなどの外道は釣れるが、アマダイがなかなか顔を出さなかった。この状況を考えると、あと1匹釣った方が勝利に限りなく近づくだろう。「あと1匹がほしい」。そう願いながらサオに集中した。

 残り1時間になったところでアタリをつかんだのは、やはり「持ってる男」哀川だった。小ぶりではあったが、しっかりとアマダイを仕留めた。

 哀川 アマダイだよ。きたね。これでリードだな。頑張れよ。

 とてもうれしそうに、笑顔で言われた。このままでは「空気を読まずに勝つ」という目標が崩れてしまう。「何でお前が勝ってるんだよ」と総ツッコミを食らう展開に持ち込みたいが、時間もない。せめてドローにしようと、「あと1匹」を追い求めた。リードを広げたい哀川も集中モードに突入。ラスト30分は船上が静かになった。

 「グググッ」。サオが大きく動いた。ついにきたか。40センチオーバーのアマダイかもしれない。これで追いつきたい。心の中で手を合わせながらサオを上げた。ビッグサイズだったが、アマダイではなかった。大きなイトヨリだ。終わった…。それからほどなくして、タイムアップ。集大成の意気込みで臨んだ戦いの軍配は、哀川に上がった。

 哀川 まあね、勝つのは当たり前だよね。もう少し修行して、また出直してくるんだな。楽しかったよ。

 ポンポンと肩をたたかれた。悔しい思いもあるが、教わってきたことを生かして、悪いコンディションの中でも本命を探る気合はみせることができた。またひとつ勉強になった。

 松本船長は「台風の影響はあった。上の潮が速かったし、濁りがあったね」とこの日のコンディションを悔やんだ。それでもアマダイのシーズンはこれからだ。「11月から本格的に始めて、正月明けぐらいまでがシーズン。これからどんどん良くなって、45センチ級が釣れるようになるよ」と心配はしていない。

 私は「哀川さん、ありがとうございました。また成長して帰ってきます」と感謝。しっかりと握手を交わして、港に別れを告げた。

 ▼船 熱海「第十喜久丸」【電話】090・5456・8449。アマダイ五目は午前と午後便があり、午前は6時半出船、11時半沖上がり。午後は0時半出船、5時沖上がり。1人1万1000円。このほか、カワハギ船などもある。詳細は船宿まで。