【第86回】
寝ない子は育たない
生活習慣
「寝る子は育つ、ということわざがありますが、裏を返せば、寝ない子は育たない。日本の子どもは世界の中でも平均睡眠時間が短いのです」と、子どもの睡眠時間の短縮化を懸念しているのは、熊本大助教授で睡眠を専門に研究する粂和彦医師だ。
大人の場合、多少の寝不足には耐えられるが、成長期の子どもは、体のためというよりも脳と心のために十分な眠りが必要だ。だが、塾や部活動だけでなく、インターネットや携帯電話などにも追われて、子どもたちの一部は、大人でさえも耐えられないほど「短眠」の生活を送っている。
「中学生から高校生に初発するナルコレプシーなど、命にはかかわらないけれど、生活の質や、場合によると、学校の成績の悪化から人生の質までも変えてしまうような睡眠の病気が問題になっています」と、粂医師は睡眠に関するトラブルが、気づかれないまま見逃されている可能性についても指摘する。
「僕も思春期の子どもを持つ親ですが、子どもは多くの場合、放置しても元気に育ちます。普通の病気にかかった場合なら、日本で受けられる医療の平均点は良いのですが、少し難しい病気になると、親や教師など周囲の大人が正しい知識、情報を持っていないと、適切な医療を受けられずに、病状を悪化させることも少なくないのです」。粂医師は、子どもの食、睡眠などの生活習慣について、大人が興味を持ち、何か変わったことが起きたら、自分でも情報を集めることを親に勧めている。
「子どもが成長するときには『しつけ・教育をする人』と『話を聞いてあげる人』が必要です。そのどちらも、子どもに愛情を持たなければ務まりません。子育てを母親だけで抱え込むのではなく、母親の方も父親が育児に関与できるように、たまには育児を任せてみたりしてほしいですね」と粂医師。家庭内でもさまざまな視点で、子供たちの心や体を見守っていくことが、思春期の健康な成長を助けることを、父親と睡眠の専門医、両方の立場からアドバイスしている。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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