東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)の女性蔑視と取られる問題発言を受け、13年に日本ラグビー協会初の女性理事に就任した稲沢裕子氏(62)が4日、日刊スポーツの取材に応じ、困惑の声を上げた。

森氏は3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、15年まで会長を5期務めたラグビー協会での出来事を一例に挙げた。

(1)理事会での女性競争意識発言 稲沢氏は「森会長時代の女性理事となると、私1人しかいない。私のことかしら…」と疑問を呈した。森氏が会長退任後の19年6月に女性理事が5人に増加。「いつの時代の理事会なのか、事実関係がよく分からない」と続けた。

(2)理事会に女性がいると進行に時間がかかる発言 昭和女子大で特命教授も務める稲沢氏は「今の理事会は時間内に終わっている」と強調。「大学の授業では逆に学生の発言を促すのに苦労し、現実そのようなことを経験したことがない」と本音を漏らした。森氏のこの日の発言撤回を理解した上で、「ただ根拠については示されていなかった。ジェンダー(性別)と発言時間についてさまざまな研究が行われており、その根拠を探したが、現時点では見つからなかった」と述べた。

稲沢氏は元読売新聞社主任研究員で長く女性問題を取材し、女性向けサイト「大手小町」の編集長などを務めた。競技を知らない素人目線での意見を求められ、13年に初の女性理事として就いた。当時は、柔道女子日本代表の暴力問題などと重なり、各競技団体の役員に女性がいないことが問題視されていた。

東京五輪・パラリンピック開催がコロナ禍で不透明な中、奮闘する83歳の“先輩”へ気遣いも見せた。今回の一連の問題発言は「たとえ頭の中でそう思っていても、言葉にしてはいけない。考え方も(ラグビー同様に)世界基準になってもらいたい。また、高齢でがんを克服したので、自身の健康も大切にしてもらいたい」と激励の言葉を送った。【峯岸佑樹】